目付めつけ)” の例文
十月の十二日は慶喜が政権奉還のことを告げるために、大小目付めつけ以下の諸有司を二条城に召した日である。一同の驚きはなかった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ですがお目付めつけさま、いくら働けといったところで、こんな鉱気かなけのないくそ山を、かえしたところでしようがありますまい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、ここまで来た以上は、あけてやらないのも卑怯ひきょうであると米友は思いました。どうかするとその筋の目付めつけが女を使用して、人の罪跡を探らせることがある。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
定められ十二月二日より評定所に於て役々寄合あり夫より毎月二日十二日廿二日を定日とせられ元祿げんろく二巳年八月廿五日より必ず御目付めつけは立合事に相成しなりされば此日も老若方らうにやくがた
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
目付めつけに目をつけるがために目付を置き、監察を監察するがために監察を命じ、結局なんの取締りにもならずしていたずらに人の気配を損じたるの奇談は、古今にその例はなはだ多し。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
友人はもとよりなんにも知らずに連れ出されたのであるが、バルザックはねて自分の苦心している名を目付めつけようという考えだから往来へ出ると何もしないで店先の看板ばかり見て歩行あるいている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「知ってのとおり、おれは堀普請の目付めつけ役をしておる、坂本も相い役だったが、——おれのところへやって来おって、小日向こびなたの普請小屋に、不取締りのことがあるから、注意するようにと申しおった」
天文に通じている家来の才木茂右衛門さいきもえもんと云う男が目付めつけへ来て
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
隠し目付めつけともいわれている。将軍家がひそかにお庭茶屋へ誰かをよんで密談を聴く場合でも、庭番頭だけは、近くにいて、見張りをつとめている。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これが大問題だぞ。先月の二十二日、大坂のお目付めつけがお下りという時には、伊那の助郷が二百人出た。例幣使(日光への定例の勅使)の時のことを
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そんなことは知らん、俺は菱屋とやらの番頭でもなければ、盗賊の目付めつけでもないぞ」
感心かんしんあり夫より役人やくにんへ評議中主税之助は御小人おこびと目付めつけ警固けいごに及びせき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
じしんが総奉行そうぶぎょうたり、おもなる家臣かしん目付めつけたる役目上やくめじょう、大久保家では、このたびの試合しあいにいっさい何人なんぴともだしておらぬ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
開港の事情を知るには、神奈川条約の実際の起草者なる岩瀬肥後守いわせひごのかみに行くに越したことはない。それにはまず幕府で監察(目付めつけ)の役を重んじたことを知ってかかる必要がある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しちゃあいられねえ、人から頼まれて乗物の目付めつけ
今やと相待たりさて役人方の上席は老中井上河内守殿若年寄わかどしより大久保長門守殿石川近江守殿寺社じしや奉行黒田豐前守殿左の方には大目付おほめつけ有馬出羽守殿おん目付松浦與四郎殿其外評定所留役とめやく御徒士おかち目付めつけ小人こひと目付めつけに至るまで威儀ゐぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
不破ふわ彦三勝光に金森五郎八長近のふたりが随行ずいこうした。こう二者は共に柴田の直臣だ。副使の格であるが、利家にたいする目付めつけたることはいうまでもない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼が過ぐる冬十月の十二日に大小目付めつけ以下の諸有司を京都二条城の奥にあつめ、大政奉還の最後の決意を群臣に告げた時、あるいは政権返上の後は諸侯割拠の恐れがあろうとの説を出すものもあるが
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
城中には目付めつけとして、また督戦のためもあって、味方の吉川、小早川の両家から来ている検使の将、数名がいた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして一体、道誉自体のごころは誰がこれの目付めつけとなって高時へ教えてやるのかと、師直とすれば、ここで一言いってやりたいところだったに相違ない。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
他国の使者が着くと、その日から接伴役せっぱんやく、案内役が付ききりになる。もちろん目付めつけだ、鄭重なる監視人である。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黄泥岡こうでいこうは、済州さいしゅう管下だな。すぐ済州奉行所へくだっていけ。そして下手人どもを召捕えるまでは、余の目付めつけとして、奉行所にとどまり、与力どもを督励しておれ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、目付めつけの人々はあわてて、そこから合図あいずの手をあげると、ドウーンと三流みながれの太鼓たいこが鳴りこむ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
目付めつけのような武士をさえつけて、日常のことまで、帰ると報告を聞くといったふうであった。
書中によれば、さい大臣からの目付めつけまで下向げこうして、済州奉行所に泊りこみ、十日以内に、犯人のこらずからめ捕れとの厳達とか。お互い吏務にたずさわる者として、こんな苛烈な上命には思いやらるるよ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姫路城から国境の目付めつけに来ているその武士さむらいは大きくうなずいた。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なるほど、なるほど。野菜畑の目付めつけならいいかもしれぬ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お目付めつけの巡回です。軍監の佐々木殿が通られます……」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)