白衣びゃくい)” の例文
うがはやいか、おじいさんの白衣びゃくい姿すがたはぷいとけむりのようにえて、わたくしはただひとりポッネンと、この閑寂かんじゃく景色けしきなかのこされました。
「すると、あの小田原の町に現れていたサーベルを腰に下げた老人や、白衣びゃくいを着た若者なども、逃げかえったんですか」
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
のみならずほどなくその姿は、白衣びゃくいの据を長く引いた、女だと云う事まで明らかになった。彼は好奇心に眼を輝かせながら、思わず独木舟のみよしに立ち上った。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すると、片隅にこもを敷いて寝ていたひとりの白衣びゃくいの男が、手枕を上げて、むっくりと起きかけました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太鼓たいこしょう篳篥ひちりきこと琵琶びわなんぞを擁したり、あるいは何ものをも持たぬ手をひざに組んだ白衣びゃくいの男女が、両辺に居流れて居る。其白衣の女の中には、おかずばあさんも見えた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
僧は菅笠すげがさ竹杖たけづえをついていた。緑樹の色がうっすらとその白衣びゃくいを染めて見せた。
岩魚の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
素膚に薄い白衣びゃくいを着た牧師と柚子が、胸まで水に漬って立っている。
春雪 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
白衣びゃくい——それは白い袋のなぞである。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ると、室内しつないには白衣びゃくいた五十さいおもわるる一人ひとり修験者しゅけんじゃらしい人物じんぶつて、鄭重ていちょうこしをかがめて私達わたくしたちむかえました。
空中をフワフワ飛んでゆく白衣びゃくいの怪人が現れたかと思うと、間近くから救いを求める老婦人の金切声かなきりごえが起りました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ただみずをかぶったような清浄せいじょう気分きぶんになればそれでよろしいので、そうすると、いつのにか服装みなりまでも、自然しぜん白衣びゃくいかわってるのでございます。
白衣びゃくいの人は、なおもフワフワと飛びつづけてゆきます。そしてだんだん高く昇ってゆきます。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)