生花いけばな)” の例文
番頭傳兵衞でんべゑいへる者あづか支配しはいなし居たるが此處に吉之助をつかはして諸藝しよげいの師をえらみ金銀にかゝはらずならはするに日々生花いけばなちや其外そのほか遊藝いうげい彼是なにくれと是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
○「お習字、生花いけばな、おこと、おどり——こういうものにかえってモダニティを感じ、習い度いと思うことはあるけれど、さて、いざとなって見るとね。」
現代若き女性気質集 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それから、私がこうした女中よりもひどい取扱いをされているのとは反対に、貞子さんは踊りも裁縫も生花いけばなもすっかり稽古けいこさせてもらっているのを知った。
しかしこと生花いけばな茶道さどうによって教育され、和歌や昔物語によって、物のあわれの風雅ふうがを知ってた彼の妻は、良人と共に、その楽しみを別ち味わうことができた。
竜子は十七になった今日でも母の乳を飲んでいたころと同じように土蔵につづいた八畳のに母と寝起ねおきを共にしている。こと三味線さみせん生花いけばな茶の湯の稽古けいこも長年母と一緒である。
寐顔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
生花いけばな師匠の素人弟子、紹介者は、凡て誠しやかな甘言を以て、世の好事家こうずかを誘い込むのであるが、上べはどんなにとりすましても、多くはあばずれの職業婦人に過ぎないのだ。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
生花いけばな、裁縫、諸礼、一式を教えられ、なお男子の如く挙動ふるまいし妾を女子らしからしむるには、音楽もて心をやわらぐるにかずとて、八雲琴やくもごと、月琴などさえ日課の中に据えられぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
そのお浜が、可哀想になんということなく気分がすぐれなくなり、一と月ばかりの間に、大した病気というでもなく、水の切れた生花いけばなのように、しおしおと弱って死んでしまいました。
この学校の向うに、後日ごにちあたしが生花いけばなを習いにいった娘の家で、針医さんがあった。
初七日しょなぬかもうでし折には、なかばれたる白張しらはり提灯ちょうちんさびしく立ちて、生花いけばなの桜の色なくしぼめるを見たりしが、それもこれも今日はのこりなく取捨られつ、ただ白木の位牌と香炉のみありのままに据えてあり。
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
どの生花いけばなにもよくあることであるけれども
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
そのお濱が、可哀想に何んといふことなく氣分が勝れなくなり、一と月ばかりの間に、大した病氣といふでもなく、水の切れた生花いけばなのやうに、しを/\と弱つて死んでしまひました。
雪はんだ。裸虫はだかむし甲羅こうらを干すという日和ひよりも日曜ではないので、男湯にはただ一人生花いけばなの師匠とでもいうような白髭しらひげの隠居が帯を解いているばかり。番台の上にはいつも見るばばあも小娘もいない。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
大きな如輪じょりん長火鉢ながひばちそばにはきまって猫が寝ている。ふすまを越した次の座敷には薄暗い上にも更に薄暗いとこに、極彩色ごくさいしき豊国とよくにの女姿が、石州流せきしゅうりゅう生花いけばなのかげから、過ぎた時代の風俗を見せている。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)