生疵なまきず)” の例文
そのことでは「うごめくもの」時分よりもいっそう険悪ないがみ合いを、毎晩のように自分は繰返した。彼女の顔にも頭にも生疵なまきずが絶えなかった。
死児を産む (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
サ、犠牲いけにえに捧げます。お打ち遊ばせ、おつめり遊ばせ、この頃ようようなくなりましたこのお身体からだ生疵なまきずをまたいくらでもお付けなさい。どんなにでもお責めなさいな。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不死身で無鉄砲という危険けんのんな人で、始終喧嘩の仲人ちゅうにんをしたり、喧嘩をするので生疵なまきずの絶えない人ですが、親父が死んでから余程我も折れましたが、生れつきのきおいだから
わたしおこしてくだされ、何故なぜ身躰からだいたくてとふ、それは何時いつつまゝに驅出かけいだしてだいをとことらへられるを、振放ふりはなすとておそろしきちからせばさだめていたからう生疵なまきず處々ところ/″\にあるを
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二人とも向脛むこうずね生疵なまきずが絶えないとでもいったような気持がしました。
「いんね、十七でいまの家へ一度縁づいたけれど、しゅうとさんが余り非道で、厳しゅうて、身体からだ生疵なまきずが絶えんほどでね、とても辛抱がならいで、また糸繰いとくりの方へげていた時でしたわ。」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私を起して下され、何故か身體が痛くてと言ふ、夫れは何時も氣の立つまゝに驅け出して大の男に捉へられるを、振はなすとて恐ろしい力を出せば定めし身も痛からう生疵なまきずも處々に有るを
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私を起して下され、何故か身体からだが痛くてと言ふ、それは何時も気の立つままに駆けいだして大の男にとらへられるを、振はなすとて恐ろしい力を出せば定めし身も痛からう生疵なまきず処々ところどころに有るを
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
秋の仁和賀にわかにもひけを取らず、座敷へ出ても押されぬ一本、は清元で、ふり花柳はなやぎの免許を取り、生疵なまきずで鍛え上げて、芸にかけたら何でもよし、客を殺す言句もんくまで習い上げた蝶吉だ、さあ来い!
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
生疵なまきずの絶間もない位、夜はというと座敷を廻り歩いちゃあ、年上の奴に突飛ばされて、仰向けに倒れると見っともないといって頬板ほっぺたたれたもんだ、何のためだ、同じ我々同胞どうぼうの中へ生れて来て
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただその粗忽そこつがあった時ばかりではなく、着物を畳んで背筋を曲げたと言っては折檻せっかん、踊がまずいといってはたれて、体に生疵なまきずの絶間もないのに、寒さは骨を通すようなあけ方までも追廻されて
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)