特更ことさら)” の例文
ことに欄間の周囲に張った模様画は、自分の知り合いのさる画家に頼んで、色々相談の揚句に成ったものだから、特更ことさら興味が深い。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
特更ことさらあれは支那流というのですか病人流というのですか知りませんが、紳士淑女となると何事も自分では仕無いで、アゴ指図を極め込んで甚だ尊大に構えるのが当世ですネ。
旅行の今昔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
戯文世界の文学は、価値ある思想を含有せし者にあらざること、吾人と雖、之をざるにあらず、然れども戯文は戯文なり、何ぞ特更ことさらに之を以て今の文学を責むるの要あらんや。
内部生命論 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
電燈でんとうひかり白晝まひるあざむかんばかりなる市街しがい上陸じやうりくして、ひそかに櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさより委任ゐにんけたる、電光艇でんくわうていよう秘密藥品ひみつやくひん買整かひとゝのへ、十二のたる密封みつぷうして、いま特更ことさらふね艤裝ぎさうする必要ひつえうもなく
シャロットをせる時何事とは知らず、岩のくぼみの秋の水を浴びたる心地して、かりの宿りを求め得たる今に至るまで、ほおあおきが特更ことさらの如くに目に立つ。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其中に西村左馬允という者があって、大の男の大力の上に相撲は特更ことさら上手の者であった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
日出雄少年ひでをせうねん特更ことさら子供心こどもごゝろ愉快ゆくわい愉快ゆくわいたまらない、丁度ちやうど牧塲まきばあそ小羊こひつじのやうに其處此處そここゝとなくんであるいて、折々をり/\わたくしそばはしつてては甲板かんぱんうへ裝置さうちされた樣々さま/″\船具せんぐについて疑問ぎもんおこ
ひとに知れないように気を配りがちな彼らの態度は、あたかも罪を犯した日影者のように見えて、彼の子供心にさびしい印象を刻み付けた。こうした聯想れんそうが今の彼を特更ことさらびしく思わせた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)