物凄ものすさま)” の例文
まだ、朝早あさまだき、天守てんしゆうへからをかけてかたちくもむらがつて、処々ところ/″\物凄ものすさまじくうづまいて、あられほとばしつてさうなのは、かぜうごかすのではない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それはあの巨大な鉄骨で組立てられたクレーンが、物凄ものすさまじい響きをあげて、呀ッという間に、全速力で一同の頭上を通り過ぎたのであった。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さすがの燕王も心に之をにくみて色よろこばず、風声雨声、竹折るゝ声、裂くる声、物凄ものすさまじき天地を睥睨へいげいして、惨として隻語無く、王の左右もまたしゅくとしてものいわず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
物凄ものすさまじく眼を血走らせて遂にはがっくり砂利の上に前足を折って倒れてしまう事も度々です。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
自暴やけと自暴との怖ろしい打着ぶっつかり合いであるようでもあるし、血の出るような、うみの出るような、熱苦しい物凄ものすさまじい心持がここまでつづいて、おたがいにどろどろに溶け合って
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
半日の余にわたる死闘、また死闘の物凄ものすさまじい血戦の後、月は山の肩に、白く冴えた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雨強く風はげしく、戸をゆすり垣を動かす、物凄ものすさまじくるる夜なりしが、ずどんと音して、風の中より屋の棟に下立おりたつものあり。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
全くドームの中の鬼気きき人に迫る物凄ものすさまじさはドームへ入ったことのある者のみが、知りあたうところの実感だ。そこには恐しく背の高い半球状の天井てんじょうがある。天井の壁も鼠色にぬりつぶされている。
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
暗夜あんやごと山懐やまふところを、さくらはなるばかり、しろあめそゝぐ。あひだをくわつとかゞやく、電光いなびかり縫目ぬいめからそらやぶつて突出つきだした、坊主ばうずつら物凄ものすさましいものである……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いかにも人はこもらぬらしい、物凄ものすさまじき対岸むこうの崖、炎を宿して冥々めいめいたり。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)