ぢゝ)” の例文
長吉ちやうきちかく思案しあんをしなほすつもりで、をりから近所の子供を得意にする粟餅屋あはもちやぢゝがカラカラカラときねをならして来るむかうの横町よこちやうの方へととほざかつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
さうなることは堪らない。所謂物のわかりの好いぢゝになることは私には堪らない。矢張怒る時には怒りたい。泣く時には泣きたい。笑ふ時には笑ひたい。
閑談 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
「なあぢゝはうがよかつぺ」といひけた。卯平うへいしがめるやうなかすかに點頭うなづいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ムンムスぢゝい。あれを見い。こんな長閑のどかな空を見たことがあるかい。木の葉や草花がこんなに可哀かはいらしく見えたことがあるかい。これからお前と二人でぶら/\歩いて別荘に往かう。
長い年月としつき——さうして過した長い年月としつきを、この墓守のぢゝは、一人さびしく草をつて掃除してたのだ。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
幸ひ午近ひるぢかくのことで見渡みわたす川岸に人の往来わうらい杜絶とだえてゐる。長吉ちやうきち出来できるだけ早くめしでもさいでもみん鵜呑うのみにしてしまつた。釣師つりしはいづれも木像のやうに黙つてゐるし、甘酒屋あまざけやぢゝ居眠ゐねむりしてゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
甘酒屋あまざけやぢゝがいつか木蔭こかげに赤くつたおろしてゐた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)