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濛
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もう
ふりがな文庫
“
濛
(
もう
)” の例文
対手
(
あいて
)
の姿は見えないで、そこには
濛
(
もう
)
とした血煙だけが残っていた。衆は
渦
(
うず
)
を巻いて混乱し、一人は真一文字に走っているのだ。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鶏が
嗄
(
しわが
)
れた声で鳴いた。
曙
(
あけぼの
)
の最初の光が、一面に
濛
(
もう
)
と曇った窓ガラスを通して現われた。降りしきる雨におぼれた、悲しい
蒼白
(
あおじろ
)
い曙であった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
やがて上の蒲団を容赦なく引き
除
(
の
)
けると、
髪毛
(
かみのけ
)
を
濛
(
もう
)
と空中に渦巻かせて、
寝床
(
ベッド
)
の中に倒れ込むようにメスを振りおろした。
復讐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
可厭
(
いや
)
な音だ。がそれにしては、石油の
臭
(
におい
)
がするでもなし……こう精神が
濛
(
もう
)
としては、ものの香は分るまい。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いや、ひとつはまたその大切な瞬間が、ズドウン! と彼女の指から突然に発した轟音のために、
濛
(
もう
)
ッと、硝煙に包まれてしまったのでもあった。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
「あゝ、
不可
(
いけな
)
い、
其處
(
そこ
)
を。」と
手
(
て
)
を
擧
(
あ
)
げて
留
(
と
)
める
間
(
ま
)
もなく、
足許
(
あしもと
)
に、パツと
火
(
ひ
)
が
燃
(
も
)
えて、わツと
飛
(
と
)
び
移
(
うつ
)
つた
途端
(
とたん
)
に、
丸木橋
(
まるきばし
)
はぢゆうと
水
(
みづ
)
に
落
(
お
)
ちて、
黄色
(
きいろ
)
な
煙
(
けむり
)
が——
濛
(
もう
)
と
湧立
(
わきた
)
つ。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
濛
(
もう
)
——と、
煙硝
(
えんしょう
)
くさい
弾
(
たま
)
けむりが、
釣瓶
(
つるべ
)
うちにはなす鉄砲の音ごとに、
櫓
(
やぐら
)
の上までまきあがってくる。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……
鬢
(
びん
)
のおくれ毛が
掛
(
かか
)
るのを、とや
角
(
かく
)
言っては罰の当った話ですが、どうも小唄や
小本
(
こほん
)
にあるように、これがヒヤリと参りません。べとべとと汗ばんで、
一条
(
ひとすじ
)
かかると
濛
(
もう
)
とします。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「わッ……」
細
(
こま
)
かい血が
濛
(
もう
)
とあがる……。九鬼弥助は
空
(
くう
)
をつかんで、
楢
(
なら
)
の傾斜へ落ちこんで行った。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
霜夜に
芬
(
ぷん
)
と香が立って、薄い煙が
濛
(
もう
)
と立つ。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、断末の血煙りが、
濛
(
もう
)
として霧のように立つ、そしてしばらくは
血腥
(
ちなまぐさ
)
い風が、柳の樹かげに漂ってあたりを去らぬばかり。ほっと息を入れて、初めてそのところの黒い影を見た重兵衛。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
濛
漢検1級
部首:⽔
16画
“濛”を含む語句
濛々
濛気
濛濛
濛靄
濛煙
白濛々
冥濛
溟濛
余燼濛々
濛々迷々
黒霧迷濛
迷濛
紛々濛々
空濛
熢々濛々
喧々濛々
濛雲国師
夕濛靄
惨霧濛々
戦塵濛々
...