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溪水
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たにみづ
昭和二年、
大噴火をなしたときも
噴火口から
流れ
出る
鎔岩が、
恰も
溪水の
流れのように
一瀉千里の
勢を
以て
駈け
下つたのである。
と、
高き
調は
荒鷲の、
風を
搏いて
飛ぶごとく、
低き
調は
溪水の、
岩に
堰かれて
泣く
如く、
檣頭を
走る
印度洋の
風、
舷に
碎くる
波の
音に
和して、
本艦々上、
暫時は
鳴も
止まなかつた。
この
時に
磐梯山の
大部分は
蒸氣の
膨脹力によつて
吹き
飛ばされ、
堆積物が
溪水を
塞いで
二三の
湖水を
作つたが、
東側に
流れ
出した
泥流のために
土地のみならず
崩壞した
土砂の
分量が
大きくて、
百米立方、
即ち
百萬立方米の
程度にもなれば、
斜面を
沿うて
流れ
下るありさまは、
溪水が
奔流する
以上の
速さを
以て
馳せ
下るのである。