“淫(みだら)” の例文
よいか、今申した通り、きゃつめがいろいろと淫(みだら)がましゅう言い寄って参るに相違ないゆえ、風情(ふぜい)ありげに持ちかけて、きゃつを坊主にせい
「わが身はこの雷横の母じゃ。生れ損いを産んだ母じゃ。けれどな女子(おなご)、わしはまだそなたのような淫(みだら)な売女(ばいた)風情を子にもったことはないぞえ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浮(うか)れ車座のまわりをよくする油さし商売は嫌(いや)なりと、此度(このたび)は象牙(ぞうげ)を柊(ひいらぎ)に易(か)えて児供(こども)を相手の音曲(おんぎょく)指南(しなん)、芸は素(もと)より鍛錬を積(つみ)たり、品行(みもち)は淫(みだら)ならず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……そうしてどうぞ私の胸から、醜い淫(みだら)な慾望を、どうぞお取り捨てくださいますよう……未だに私は迷っております。未だに私は焦(こが)れております。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
顔だけがクッキリと浮び、淫(みだら)がわしくとりみだした風情(ふぜい)は、薄暗の中に溶け込んで、夢の様な美しさを醸(かも)し出した。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
今まで覗いたこともなかつた人の世界の真実が、この淫(みだら)な女の涙の中からありありと男の心の眼に映つて来た。け高いと云はうか、神神しいと云はうか。
瘢痕 (新字旧仮名) / 平出修(著)
始はかやうな淫(みだら)な事を、ものものしう詮議立てするが、おのれにも恥しうて、うちつけに尋ねようは元より、「ろおれんぞ」の顔さへまさかとは見られぬ程であつたが
奉教人の死 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
正しく仕える身であるから、彼らは淫(みだら)な形(なり)を慎む。相応しき体を整え、謹ましく衣を染める。奢(おご)る風情は器らしき姿ではない。華かに過ぎるなら、仕える心に悖(もと)るではないか。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そこには鍔(つば)の広い色変りの帽子や、天鵞絨(びろうど)の洋服を着た日本の画学生(ゑがくせい)が五六人集まつてゐた。みんな喰べ酔つた顔をしながら、巻煙草の煙(けぶり)と一緒に、淫(みだら)な女の噂などを吐き出してゐた。
そんな淫(みだら)なことに身を過つのを慙(は)ずる心の方が強かったからであります。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かくのごとく天城四郎は、無慈悲だ、強慾だ、殺生ずきだ! そして、女を見れば淫(みだら)になり、他人の幸福を見れば呪詛(じゅそ)したくなる。——これでも俺を善人というか
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(自分を見廻し)われながらこの悪魔! われながら華美のこの姿! 幾百千人の若い女を、罪と不貞に導いたか! 淫(みだら)を語るこの唇で、情(なさけ)深げの歌を歌い、乙女心を誘ったか。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
正しく仕える身であるから、彼らは淫(みだら)な形(なり)を慎しむ。相応わしき体を整え、慎ましく衣を染める。奢(おご)る風情は器らしき姿ではない。華かに過ぎるなら、仕える心に悖(もと)るではないか。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
薄黒い唇が淫(みだら)がましく開いて、そこから脂(やに)に染まった長い歯が覗いていた。
淫(みだら)なる魔の係蹄(わな)にしも
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
淫(みだら)の心となったこと、丁度、一年前、北の浜辺で紅い薔薇の花を、紫の袍を着た、桂の冠をかむった、銀の竪琴を持った、若い美しい音楽家に貰った時のような心持ちとなったことを
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
異性の匂いばかりを嗜(たしな)んでいたため衰弱し切った若い男に、往々見られるそれのような、怪しい淫(みだら)な病的な、赤味を頬に持っていて、それがかえって美しい、——といったような武士であった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)