流眄しりめ)” の例文
それを聞いて、フト振向いた少年の顔を、ぎろりと、その銀色の目で流眄しりめにかけたが、取って十八の学生は、何事も考えなかった。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蝦蟇法師は流眄しりめに懸け、「へ、へ、へ、うむ正に此奴こやつなり、予が顔を傷附けたる、大胆者、讐返しかえしということのあるを知らずして」傲然ごうぜんとしてせせら笑う。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すかさず、この不気味な和郎を、女房から押隔てて、荷を真中まんなかへ振込むと、流眄しりめに一にらみ、直ぐ、急足いそぎあしになるあとから、和郎は、のそのそ——おおきな影を引いて続く。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あたか加能丸かのうまる滅亡めつばう宣告せんこくせむとて、惡魔あくまつかはしたる使者ししやとしもえたりけむ、乘客等じようかくらは二にんにん彼方あなた此方こなたひたひあつめて呶々どゞしつゝ、時々とき/″\法華僧ほつけそう流眄しりめけたり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
百人長は毛脛けずねをかかげて、李花の腹部をむずとまえ、じろりと此方こなた流眄しりめに懸けたり。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
百人長は毛脛けずねをかかげて、李花の腹部を無手むずまへ、ぢろりと此方こなた流眄しりめに懸けたり。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
傍聞かたえぎきする女房を流眄しりめに懸けて、乃公だいこうの功名まッこのとおり、それ見たかといわぬばかり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とわが顔に頬をあてて、瞳は流れるるごとく国麿を流眄しりめに掛く。国麿は眉を動かし
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さらぬだに、われを流眄しりめにかけたるが気にかかりて、そのまま帰らむかと思えるならば、こらえず腹立たしきに、伯母上がたまいし銀貨りたる緑色の巾着、手に持ちたるままハタとなげうちたり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どこまでも人をしのいだ仕打しうちな薬売は流眄しりめにかけてわざとらしゅうわし通越とおりこして、すたすた前へ出て、ぬっと小山のような路の突先とっさきへ蝙蝠傘を差して立ったが、そのまま向うへ下りて見えなくなる。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ああ、と喟然きぜんとして天井を仰いで歎ずるのを見て、誰が赤い顔をしてまで、貸家を聞いて上げました、と流眄しりめにかけて、ツンとした時、失礼ながら、家で命はつなげません、貴女は御飯が炊けますまい。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
向者さきのほどは腕車を流眄しりめに見て、いとも揚々たりし乗り合いの一人いちにん
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(死んだか、)と聞いて、女房のお増に流眄しりめにかけられ
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
言棄てて槍を繰り込み、流眄しりめに掛けながらかむとす。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
美人は流眄しりめにかけて
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)