比肩ひけん)” の例文
◯十二節—二十一節は有名なる幽霊物語ゆうれいものがたりにして、文学的立場より見てシェークスピヤの悲劇マクベス中のそれと比肩ひけんすべき者といわれておる。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「光陰」のタッチの軽快、「こぶ」のペエソス、「百日紅さるすべり」に於ける強烈な自己凝視など、外国十九世紀の一流品にも比肩ひけん出来る逸品と信じます。
風の便り (新字新仮名) / 太宰治(著)
学人がくじんは、代々土着の家柄の人で、世評に聞けば、書は万巻に通じ、胸に六韜三略りくとうさんりゃくをきわめ、智は諸葛孔明しょかつこうめいに迫り、才は陳平ちんぺいにも比肩ひけんし得よう、とある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「十五歳の頃春琴の技大いに進みて儕輩さいはいぬきんで、同門の子弟にして実力春琴に比肩ひけんする者一人もなかりき」
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
雅家まさいえ北畠きたばたけと号す——北畠親房きたばたけちかふさその子顕家あきいえ顕信あきのぶ顕能あきよしの三子と共に南朝なんちょう無二の忠臣ちゅうしん楠公なんこう父子と比肩ひけんすべきもの、神皇正統記じんのうしょうとうきあらわして皇国こうこくの正統をあきらかにす
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
実際雲仙の紅葉は他に比肩ひけんするものなく、日本一の折紙がつけられているのである。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
辣腕らつわん剽悍ひょうかんとの点においては近代これに比肩ひけんする者無しとたんぜられているひと。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
上下じょうか三千の部屋からなっていたという、あのべらぼうな規模には比肩ひけんすべくもないけれど、その設計の理智的な複雑さにおいては、むしろジロ娯楽園の迷路に団扇うちわを上げなければならぬであろう。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
宗達そうたつなどの流儀を真似たのであるとはいへとにかく大成して光琳派といふ一種無類の画を書き始めたほどの人であるから総ての点に創意が多くして一々新機軸を出して居るところは殆ど比肩ひけんすべき人を
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
壮年から好学のひとで、学問においては、おそらく臣下のたれもかれに比肩ひけんできなかったであろう。英邁な気性さえ見られ、わけて生母には孝行だった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、数正の軍功といったら、この三河えぬきの勇猛はずいぶんあるが、かれに比肩ひけんし得る者はない。その点でも、赫々かっかくたる武勲第一の棟梁とうりょうといってよい。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それとて、ここにある同輩たちは、その弥太郎に絶対比肩ひけんできないものとは誰ひとり考えていないのだ。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まさに死なんとするやその言よしという。朕の言葉に、いたずらに謙譲であってはならぬぞ。……君の才は、曹丕に十倍する。また孫権ごときは比肩ひけんもできない。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とはいえ、その五郎右衛門といい、宗矩といい、おそらく畿内きないの剣人では、比肩ひけんし得る者はなかった。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「拙者ごときの類ではありません。——それを今日の人物と比較することは困難で、古人に求めれば、周の太公望たいこうぼう、漢の張子房ちょうしぼうなどなら、彼と比肩ひけんできるかもしれませぬ」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同時に、わが毛利家に比肩ひけんする強大はどこにも見られなくなったのだ。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)