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殘暑
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ざんしよ
つまみ
出して
障子を
締めた、
殘暑といふものは
惡る
惡う
暑い、
空氣が
通はないから
尚ほ
更らである、
曇つてゐるから
頭痛がする、たまらぬ。
いまぢあ、すこし
慣れやしたがね、
此處へはじめて
南洋から
來たときあ、まだ
殘暑の
頃だつたがそれでも、
毎日々々、ぶるぶる
震えてゐましただよ
「お
話に
成りません。……
彼岸も
近い、
殘暑もドン
詰りと
云ふ
處へ
來て、まあ、
何うしたつて
云ふんでせうな。」
宗助の
此處を
訪問したのは、十
月に
少し
間のある
學期の
始めであつた。
殘暑がまだ
強いので
宗助は
學校の
徃復に、
蝙蝠傘を
用ひてゐた
事を
今に
記憶してゐた。
降りたらぬ
殘暑の
雨や
屋根の
塵
宗助の
所へ
見えたのは、
歸つてから、まだ二三
日しか
立たない、
殘暑の
強い
午後である。