此先このさき)” の例文
代助は此先このさきあによめが此事件をう発展させる気だらうと考へて、少々弱つた。うちのものゝうちで、あによめが一番んな計画に興味をもつてゐたからである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おめえの方から、俺の枕元まくらもとへやって来て、勝手に喋舌しゃべりちらしたんだから、此先このさきとも、何う事が成り行こうと、俺の罪じゃねえぜ。それだけは断っておくよ
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
井戸ゐどふかかつたのか、それとも自分じぶんちるのがきはめてのろかつた所爲せゐか、つてからまはりを見廻みまはし、此先このさきうなるだらうかとうたがしたまでには隨分ずゐぶんながあひだちました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
……独りで留守をしてゐると、此先このさきどうしたものかを心細く考へる。何か娘に向つて具体的な事を云ひ出さねばなるまいと思ひながら、藪蛇やぶへびを恐れて一日々々と延ばしてしまふ。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
不幸ふかう彼女かのぢよぬぐふことの出來できない汚點しみをその生涯しやうがいにとゞめた。さうしてその汚點しみたいするくゐは、彼女かのぢよこれまでを、さうしてまた此先このさきをも、かくて彼女かのぢよの一しやうをいろ/\につゞつてくであらう。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
いえもうなんでございます、じつ此先このさきちやうけ、うすれば上段じやうだんへやかして一ばんあふいでそれ功徳くどくのためにするうちがあるとうけたまはりましても、まツたくのところあし歩行あるけますのではございません
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此先このさきんな変化がないともかぎらない。君も心配だらう。然し絶交した以上はやむを得ない。僕の在不在にかゝはらず、うち出入ではいりする事丈は遠慮してもらひたい
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)