根来ねごろ)” の例文
旧字:根來
けれども私が家を出て、方々漂浪ひょうろうして帰って来た時には、その喜久井町がだいぶ広がって、いつの間にか根来ねごろの方まで延びていた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ささ間詰まづめ、お庭の者、などと称される隠密の役は、駿河台の甲賀組、四谷の伊賀組、牛込の根来ねごろ組、こう三ヵ所に組屋敷があった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紀州根来ねごろに隠れて居た時の作物であり、又絵の上端に押した置き式紙の処に書いた歌から見ても、阿弥陀の霊験によって今までのがれて来た身を、更に救うて頂きたい
山越しの阿弥陀像の画因 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
紫檀したんの盆に九谷くたにの茶器根来ねごろの菓子器、念入りの客なことは聞かなくとも解る。母も座におって茶を入れ直している。おとよは少し俯向うつむきになってひざの上の手を見詰めている。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
中氏は昔瓜上うりかみと称し、河内かはちの名族であつた。承応二年和泉国いづみのくに熊取村五門にうつつて、世郷士よゝがうしを以て聞えてゐた。此中氏の分家に江戸本所住の三千六百石の旗本根来ねごろ氏があつた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
根来ねごろ薄手の椀にも合えば、金蒔絵にも合う。
くちこ (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
人のうわさによると、戦ぎらいの公達きんだちは、よく、三井みいや、叡山えいざんや、根来ねごろなどの、学僧のあいだに、姿をかえてかくれこむよしです。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は根来ねごろ茶畠ちゃばたけ竹藪たけやぶ一目ひとめ眺めたかった。しかしその痕迹こんせきはどこにも発見する事ができなかった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
亀井兵助かめいひょうすけ根来ねごろ八九郎、伊藤孫兵衛、などの顔は、彼を気強くさせるものだった。そのほか、すべてで二十人足らずの同輩がここにはいる。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これを高野や根来ねごろの僧から見れば、彼はいったい、いずれを異国人として見ているのかと、大呼したいくらいなものがあったにちがいない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紀州の畠山貞政はたけやまさだまさが、根来ねごろ雑賀さいが党などの一揆いっきをかたらい、海陸から大坂へ迫ろうとしている。勢い猛烈、油断ならずとある。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、南北さかいの町民は、女子供や老人などは、みな根来ねごろ粉河こかわ槇尾まきおなどの由縁ゆかりのある田舎へ、逃がしてしまった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、叡山えいざんを焼き、根来ねごろを攻め、日本在来の教団に対しては、かつての平相国へいしょうこくすらなし得ない暴をもって慴伏しょうふくさせて来た。弾圧などという、手ぬるいものではない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四国、紀州の根来ねごろ雑賀さいが党などの危険分子にまず潰滅かいめつを与えておくために。さらに手近な、美濃や尾張の信雄恩顧おんこの諸将にたいし、利をもってそれを切り崩すために。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
根来ねごろへ、根来へ、とそれは奔河ほんがをなして行く。早くも、根来の衆徒は、諜報ちょうほうにこぞり立って、泉州せんしゅう岸和田きしわだ附近から、千石堀せんごくぼり積善寺しゃくぜんじ浜城はましろなどにわたって、とりでを構え
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
根来ねごろの誰とか、三井寺のなにがしとか、また聖護院しょうごいんの山伏だの、鎌倉の浪人者だの、名もない市井しせい無頼漢ならずものまでが、きのうも今日もこれまで幾組来たことかわからない。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さる場合には、われらは、雑賀さいが根来ねごろの僧徒をかたらい、四国の長曾我部元親ちょうそかべもとちかどのは、瀬戸内の海賊衆をも引き具して、時を一つに、大坂表へ攻めのぼらんと存ずるのでござる
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十津川の郷士竹原八郎一族を帷幕いばくに加えて、熊野三山から高野、根来ねごろの衆徒をひきいれ、大峰山脈の一帯をとりでと見なして、外洋では伊勢、熊野の海賊をつかい、また前衛には
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
比叡ひえい根来ねごろ霊山れいざんきはらってしまぬ荒武者あらむしゃのわらじにも、まだここの百合ゆりの花だけはふみにじられず、どこの家も小ぎれいで、まどには鳥籠とりかごかきには野菊のぎく、のぞいてみれば
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紀州の畠山貞政はたけやまさだまさ根来ねごろ雑賀党さいがとう。そして四国の長曾我部元親ちょうそかべもとちかなどがその組だ。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また虚に乗じて起るおそれのある根来ねごろ雑賀さいが土冦どこう的なものに対して、畠山貞政や筒井の一部をもってその抑えとし、さらに、雪なお解けぬ江越方面の境にも、秀吉は、手許の武将をいてまで
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
静かに、根来ねごろのことばを抑え、また、大勢の同じ顔いろを見直して
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
根来ねごろ八九郎が、ゆかからいった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)