“柾目(まさめ)” の例文
ですから床の間が檜(ひのき)の一枚板であるとか、柱が柾目(まさめ)の杉であるとかいうようなことは、教授にとってなんの価値もなかったのです。
たゞ自分(じぶん)が今(いま)坐(すわ)つてゐる疊(たゝみ)の色(いろ)や、天井(てんじやう)の柾目(まさめ)や、床(とこ)の置物(おきもの)や、襖(ふすま)の模樣(もやう)などの中(なか)に、此(この)屏風(びやうぶ)を立(た)てて見(み)て、夫(それ)に、召使(めしつかひ)が二人(ふたり)がゝりで
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
十畳位の広さで、内部には柾目(まさめ)の通った檜(ひのき)の板を張り、保温のためその間には、木屑がつめられてあった。窓は防寒の二重戸になっていた。
雪 (新字新仮名) / 楠田匡介(著)
と言って、天井の板の柾目(まさめ)を仰いだり、裏小路に向く欄干(らんかん)に手をかけて、直ぐ向い側の小学校の夏季休暇で生徒のいない窓を眺めたりした。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
板屋根を葺くのは枌板といって、もとは杉(すぎ)だの檜(ひのき)だのの柾目(まさめ)のよくとおったふとい材木を、鉈(なた)のような刃物(はもの)でそぎわったうすい板であった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
例を植物に取ると致しましょう。柔かい桐(きり)や杉を始めとし、松や桜や、さては堅い欅(けやき)、栗、楢(なら)。黄色い桑や黒い黒柿、斑(ふ)のある楓(かえで)や柾目(まさめ)の檜(ひのき)。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
榧(かや)の柾目(まさめ)の盤(ばん)が三面、行儀よく並(なら)んでいた。床の間へ寄った一面は空いていて、紫ちりめんの座ぶとんだけがある。那智石(なちいし)の白へ手を突っ込んで
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三人の相槌(あいづち)をもって火気を去り、打ち返して肌に柾目(まさめ)をつけ、ほどよいころから沸(わ)かし延べの手順にかかる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
天秤棒は細手の、飴色(あめいろ)に磨(みが)きこんだ、特別製のようであり、手桶は杉(すぎ)の柾目(まさめ)で、銅(あか)の箍(たが)がかかっていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
主に杉の柾目(まさめ)を使って曲物を作ります。柄杓(ひしゃく)のような簡単なものから、飯櫃(めしびつ)だとか水桶(みずおけ)だとか寿司桶(すしおけ)など、色々と念を入れた品を見出します。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その男はきれいな手桶(ておけ)を二つ、天秤棒(てんびんぼう)で担いでやって来た。天秤棒は細手の、飴色(あめいろ)に磨きこんだ、特別製のようであり、手桶は杉の柾目(まさめ)で、銅(あか)の箍(たが)がかかっていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
拭き込んだ細かい柾目(まさめ)の板が、雲斎底(うんさいぞこ)の影を写すほどに、軽く足音を受けた時に、藤尾の背中に背負(せお)った黒い髪はさらりと動いた。途端に椽に落ちた紺足袋が女の眼に這入(はい)る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
天井の柾目(まさめ)や、床の置物や、襖(ふすま)の模様などの中に、この屏風を立てて見て、それに、召使が二人がかりで、蔵の中から大事そうに取り出して来たと云う所作(しょさ)を付け加えて考えると
門 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
伊奈(いな)から飯田にかけての渓谷の村々でも時折曲物の技を見かけます。これは檜や杉の材に恵まれているからと思います。曲物はいずれも柾目(まさめ)を用いねばなりません。止めは桜皮を用います。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)