最後しまい)” の例文
「俺あ時計バッカリ見よった、二時間と五分かかったが、その最後しまいの五分間の長かった事。停車場で一時間汽車ば待っとる位長かった」
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……かく斯うして博士の工場は何時ともなしに寂しくなってそして最後しまいには工場の中に一人の職工も居ないようになった。
物凄き人喰い花の怪 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
キスをさせて下さい……そして最後しまいには、何がどうあろうとも、わたし達のそばへおいて下さいと歎願しました。
二人の母親 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
その一番最後しまいの段の上で、草履をぬげと云われ、それから女の手に導かれて、き込んだ板鋪のはてしのない区域を過ぎ、覚え切れないほどたくさんな柱の角を𢌞り
耳無芳一の話 (新字新仮名) / 小泉八雲(著)
いくら愚図愚図ぐずぐず云ったところでどうにもならんと云ったらならんのだから、と最後しまいには、焦立いらだたしそうに卓を叩いて、文句があるなら市長に云いたまえ、と云うのであった。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
みんなが、急に景気よく、しゃべったり笑ったり、揶揄やゆしたりするなかで、浜子だけは、別天地にいる人のように、すこしも動揺されず、じき最後しまいまで完全につくりあげてしまった。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
どんなにわかりのわるものでも最後しまいにはおとなしくみみかたむけることになってしまいます。
最後しまいにはさて何うしても売って遊びに行った。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「一番最後しまいは三つの足だね? よし」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
最後しまいの二句を解釈すると、昔支那シナに悪王があって、死後塚のあばかれんことを恐れ、七十二個の贋塚にせづかを作ったが、それでもとうとうあばかれてしまった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もちろん最初さいしょ父母ふぼれいことははれい熱心ねっしんなお手伝てつだいもありますが、だんだん生長せいちょうするとともに、ますます守護霊しゅごれいはたらきがくわわり、最後しまいには父母ふぼからはなれて立派りっぱに一ぽんちのとなってしまいます。
げんにあの岩屋いわやにしても、最初さいしょなにやら薄暗うすぐら陰鬱いんうつところのようにかんぜられましたが、それがいつとはなしにだんだんあかるくなって、最後しまいには全然ぜんぜん普通ふつうあかるさ、すこしもあな内部なかというかんじがしなくなり