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晴渡
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はれわた
空は
爽に
晴渡ツて、星が、何かの眼のやうに、ちろり、ちろり
瞬をしてをる。もう村の
若衆等が、
夜遊の
歸途の
放歌すら
聞えない。
時は
丁度四
時過ぎ。
毎もなら
院長は
自分の
室から
室へと
歩いてゐると、ダリユシカが、
麥酒は
旦那樣如何ですか、と
問ふ
刻限。
戸外は
靜に
晴渡つた
天氣である。
ぞ
催しけるが三日も
暮はや四日と
成にける此日は
早天より
長閑にて四方
晴渡り海上
青疊を敷たる如く
青めき
渡ければ吉兵衞も
船頭も
船表へ出て四方を
詠め
波靜なる有樣を
空が瑠璃のやうに奇麗に
晴渡ツて、星が降るやうに
煌いている晩に、螢を追駈廻してゐるのは、
何樣なに愉快な事であツたらう。
時は
丁度四
時過ぎ。いつもなら
院長は
自分の
室から
室へと
歩いていると、ダリュシカが、
麦酒は
旦那様如何ですか、と
問う
刻限。
戸外は
静に
晴渡った
天気である。
突て
挨拶をぞなしたり其夜吉兵衞には
酒肴を
取寄せ
船頭はじめ
水主十八人を
饗應し
酒宴を
催しける明れば
極月廿九日此日は早天より
晴渡り其上
追手の風なれば船頭杢右衞門は
水主共に
出帆の
用意を