昼過ひるすぎ)” の例文
旧字:晝過
其中に段々濁る一方になったので、私達の心もまた益々ますます暗くなって行くのは情なかった。昼過ひるすぎに助七が来て、打合せが済むと一風呂浴びて帰って行く。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「太吉や、気分もいいし、お天気も好さそうだから町へ行って来るぞ。昼過ひるすぎにはじきに帰ってくるからまっていれよ。」
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
昼過ひるすぎからすこ生温なまあたゝかかぜやゝさわいで、よこになつててゐると、何処どこかのにはさくらが、霏々ひら/\つて、手洗鉢てあらひばちまはりの、つはぶきうへまでつてる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
商に出た留守の、昼過ひるすぎしんとして、柳のかげに腰障子が閉まって居る、樹の下、店の前から入口へけて、くぼんだ、泥濘ぬかるみを埋めるため、一面に貝殻かいがらが敷いてある、白いの、半分黒いの、薄紅うすべに
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
昼過ひるすぎ散歩の出掛でがけに、門野かどのへやのぞいたら又引繰ひつくり返つて、ぐう/\寐てゐた。代助は門野かどのの無邪気な鼻の穴を見て羨ましくなつた。実を云ふと、自分は昨夕ゆふべつかれないで大変難義したのである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
昼過ひるすぎからがらりと晴上って、蛇の目のからかさを乾かすような月夜になったが、昨夜ゆうべから今朝へかけて暴風雨あらしがあったので、大川は八の出水、当深川の川筋は、縦横曲折至る処、潮、満々とたたえている
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)