明朝あす)” の例文
ただ明朝あす私がここを出るまでは秘密を守っていただかんと困りますがね。ここで大声をたてられたりしたらそれっきりですからね。
動物園の一夜 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
「サァ明朝あすは早いぞ、もう寝ようか」と、狭い天幕てんと内へゾロゾロと入り込んだが、下は薄いむしろ一枚で水がジメジメとうして来る。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
伊「昼日中ひるひなか二人で出てはいけない、今夜の仕舞汽車で間にあうように、そして横浜まで落延びておいて、明朝あす一緒にこう」
かおの色を変えて、戸を立て切り、明朝あすとも言わずに竜神の社へ駈けつけて、祈祷きとう護摩ごまとを頼むに相違ないのであります。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ゆづり給はるべし手始めの功とも致したく明朝あすとも云ず今宵の中に結果かたづけ申すべしと云ふに大膳のいふ樣貴殿が手始めの功にしたしと有るからは仕事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それを文吾は子供らしくもない好奇心から、神の罰で腰が拔けたら、明朝あすの出立も糠喜びになるのを忘れて、ついフラ/\と、神籬ひもろぎの中へ忍び込んだのである。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
明朝あすは、江戸へはいろうというのだから、今夜は安着の前祝い……若殿源三郎から酒肴しゅこうがおりて、どうせ夜あかしとばかり、一同、呑めや唄えと無礼講の最中だ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
余は二ツの電報を折り重ねて、明朝あすまたきたるべき妻の顔を見たら、まずこの話をしようかと思い定めた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「きれいだろう。そら、黄色いやつもある。葉が石楠しゃくなげに似とるだろう。明朝あすなみさんにけてもらおうと思って、折って来たんだ。……どれ、すぐ湯に入って来ようか」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
今夜こんやほどは女房役にょうばうやくをせうわい。……(奧に向ひて)こりゃ、れかゐぬか!……みな出拂ではらうてしまうた。むゝ、自身じしんでパリスどのゝやしきて、明朝あす準備こゝろがまへをさせてう。
「ははあ、それでは何でありますか、明朝あすは御一所に帰れるやうな都合になりますな」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
自分の寝静まるのを待って、お政はひそかに箪笥からこの帯を引出し、明朝あす早くこれを質屋に持込んで母への金を作るつもりと思い当った時、自分は我知らず涙が頬を流れるのをき得なかった。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「それからネ、老女おばさん」と、お花は明朝あすの米かしぐ手をばし休めつ「歩きながらのお話に、此頃湖月で話した兼吉の老母はゝうちへ来て居ると先生様がつしやるぢやありませんか、老母おばさん、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
明朝あすは船が港へ入るという晩だった。
妖影 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
どうせ明朝あすわしくから一緒に参ろうと申して無理に引留め、お前に案じさせて誠に相済みません
かうむるとも明朝あすは未明に登城に及び直々ぢき/\將軍家しやうぐんけに願ひ奉るよりほかなしと思案をきはめ家來を呼び出され明朝みやうてうは六時の御太鼓たいこ相※あひづに登城致すあひだ其用意そのよういいたすべしと云付けられたり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しばらくその上に大の字になって、寝ころぶことができたら、明朝あすは殺されてもかまわない、と私は思った。私は不眠のためにの明けるまで床の中に輾転てんてんしていたことを思い出す。
動物園の一夜 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
「まあお気の毒さまねエ、明朝あすのお目覚めざにやりましょう。」
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)