日参にっさん)” の例文
旧字:日參
山城屋の夫婦はいつまでも子のないのを悲しんで、近所の不忍しのばずの弁天堂に三七日さんしちにちのあいだ日参にっさんして、初めて儲けたのがお此であった。
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
欝金うこん風呂敷ふろしきつつんで、ひざうえしっかかかえたのは、亭主ていしゅ松江しょうこう今度こんど森田屋もりたやのおせんの狂言きょうげん上演じょうえんするについて、春信はるのぶいえ日参にっさんしてりて
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
父親なんざ気をんで銃創てっぽうきずもまだすつかりよくならねえのに、此奴こいつ音信たよりを聞かうとつて、旅団本部へ日参にっさんだ。だからもうみんながうすうす知つてるぜ。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼女かのじょわたくしははと一しょに、れい海岸かいがんわたくしかくって、それはそれは親身しんみになってよくつくしてくれ、わたくし病気びょうきはやなおるようにと、氏神様うじがみさま日参にっさんまでしてくれるのでした。
「私も一つ、日参にっさんでもして見ようか。こう、うだつが上らなくちゃ、やりきれない。」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あなたはわしがどれほど故郷こきょうしたっていたか知っていられよう、そのために頼むべからざるものをも頼みとしていたことを。熊野神社くまのじんじゃ日参にっさんしたことも、千本の卒都婆そとばを流したことも。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
かれはその日からすぐに祈祷をたのむことになったが、行者は一七日いちしちにちのあいだ日参にっさんしろと云った。久次郎は勿論その指図通りにした。
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わしをなぐさめようと思っていつわりのあかしをたてないでください。わしはきょうも熊野権現くまのごんげん日参にっさんして祈りました。しかしだめです。わしはほんとうに信じていないのですから。祈りの心はすぐにかれます。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
おんなはそれからもきつづいておみや日参にっさんしました。
娘は父の病気平癒のために観音さまへ日参にっさんしているというだけのことを話して、自分の住所も姓名も名乗らずに別れて行った。おきぬは小僧の宇吉に耳打ちして、娘のあとを見えがくれにけさせた。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かれは程近い円通寺のお祖師様へ日参にっさんをはじめた。
半七捕物帳:16 津の国屋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)