日傭取ひようとり)” の例文
甲斐性がないばかりに日傭取ひようとりにまで身を落し、好きな尺八一管を友に、溝口屋の裏に住んで見る影もなく生きている馬吉だったのです。
てめえの方じゃ、面を踏まれた分にして、怒りやがるんだ、と断念あきらめてよ。難有ありがたく思え、日傭取ひようとりのお職人様が月給取に謝罪あやまったんだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そんな江戸の時世でいながら、銅鑼亀どらかめさんの部屋にいる日傭取ひようとりなどは、食う話ばかりしていて箪食壺漿たんしこしょうにたんのうしたことなどは夢にもない。
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無事に育って、日傭取ひようとりかせぎでもいいから、こくめいに働いてさえくれればよい、間違っても、おれのように足が早く生れついてくれるなと心配しました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これをしないのはわずか数人を出ない資産家か、反対に日傭取ひようとりや馬車ひきなどに限られている。
和紙 (新字新仮名) / 東野辺薫(著)
誠にはアわしが貧乏な日傭取ひようとりで、育てる事も出来ませぬなれども、私の主人の娘でようにもとは思いましたが、ついはやい気になって和尚様へ押付放おしつけぱなしにしてなにともお気の毒様
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
未荘の土穀祠おいなりさまの中に住んでいて一定の職業もないが、人に頼まれると日傭取ひようとりになって、麦をひけと言われれば麦をひき、米をけと言われれば米を搗き、船を漕げと言われれば船を漕ぐ。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
日傭取ひようとりの与八は、急に立止まって、ヒョイとお辞儀をしました。喜三郎に声を掛けられなかったらそのまま知らん顔をして行く心算つもりだったでしょう。
これは、寺男の爺やまじりに、三人の日傭取ひようとりが、ものに驚き、泡を食って、遁出にげだすのに、投出したものであった。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人入れ渡世の銅鑼屋どらやの亀さんの部屋にいる、日傭取ひようとりの人足達も、七人が七人とも雨で、十日も仕事にあぶれて、みんな婆羅門ばらもんの行者みたいに目をへこましていた。
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
現に自分が、今日までに盗んだ金額を、そっくり日割にしてみたところで、ちょっと気のいた日傭取ひようとりの分ぐらいにしか当るまい。それでいて、一歩あやまれば首が飛ぶのだ。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
馬吉のように日傭取ひようとりになったのもあり、六助や勘次のように、巧みに溝口屋に取入って、三年経たないうちに良い顔になっているのもあったわけです。
罪滅つみほろぼしのためだと思って母親の持った亭主は——間黒源兵衛——渾名あだな狂犬やまいぬという、花川戸町の裏長屋に住む人入稼業、主に米屋の日傭取ひようとりを世話する親仁おやじ
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
良い身上しんしやうつぶした上、女には棄てられ、女房には死なれ、日傭取ひようとりのやうなことをし乍らそれでも遠くへも行かず、賀奈女の阿魔が誰かに殺されるのが見たいと
く既に式場に着し候ひけむ、風聞うわさによれば、市内各処における労働者、たとへばぼてふり、車夫、日傭取ひようとりなどいふものの総人数をあげたる、意匠のパフナリーに候とよ。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
良い身上しんしょうつぶした上、女には捨てられ、女房には死なれ、日傭取ひようとりのようなことをしながらそれでも遠くへも行かず、賀奈女の阿魔が誰かに殺されるのが見たいと
ちやうどまち場末ばすゑむでる日傭取ひようとり土方どかた人足にんそく、それから、三味線さみせんいたり、太鼓たいこらしてあめつたりするもの越後獅子ゑちごじゝやら、猿廻さるまはしやら、附木つけぎものだの、うたうたふものだの
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
石原町いしはらちょう日傭取ひようとりの娘お仙と駄菓子屋の女房のおまき、それから石原新町しんまち鋳掛屋いかけやの娘おらく——」
ちょうどまちの場末に住んでる日傭取ひようとり、土方、人足、それから、三味線さみせんを弾いたり、太鼓をならしてあめを売ったりする者、越後獅子えちごじしやら、猿廻さるまわしやら、附木つけぎを売る者だの、唄を謡うものだの、元結もっといよりだの
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「待て待て、浪人と遊び人はどうせ日傭取ひようとりのようなものだ。その後ろで糸を引いてる奴の方が太い」
続いて日傭取ひようとりが、おなじく木戸口へ、肩を組合って低く出た。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「待て/\、浪人と遊び人はどうせ日傭取ひようとりのやうなものだ。その後ろで絲を引いてる奴の方が太い」
その 親仁おやじ日傭取ひようとりの、駄菓子屋ですもの。
錦染滝白糸:――其一幕―― (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日傭取ひようとりの子で金を目当てにさらわれるはずもなく、お新の母親のお豊は武家の後家ごけで、少しはたくわえもあるようですが、長いあいだ賃仕事をして、これも細々とした暮しです。
金五郎は死骸を置いて表戸を開けると、そこには、岩吉の隣に住んでいる日傭取ひようとりの与八と女房のお石が、叱られた駄々っ児のような、おびえきった顔を並べて立っているのでした。
万才まんざいではない、日傭取ひようとりだつたさうで、——文吉と一緒に江戸へ出て來て、昔は兄弟分だつたさうですが、何時の間にやら一方は出世して、長者番附にも載るやうになり、一方は落ぶれて
万歳まんざいではない、日傭取ひようとりだったそうで、——文吉と一緒に江戸へ出て来て、昔は兄弟分だったそうですが、いつの間にやら一方は出世して、長者番付にも載るようになり、一方は落ちぶれて