捨置すてお)” の例文
飛騨は名に負う山国であるから、山又山の奥深く逃げこもった以上は、容易に狩出かりだすこともできないので、余儀よぎなく其儘そのまま捨置すておいた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ばつさりやらかし此烟草入を死骸しがいそば捨置すておき人殺しを富右衞門に塗付ぬりつけ日來ひごろうらみをはらさんとゑみふくんで居たりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これしからん、無礼至極ぶれいしごくやつだ、なん心得こゝろえる、これほどの名作めいさくの詩を、詩になつてらんとは案外あんぐわいうも失敬しつけいな事をまうやつだ、其分そのぶんには捨置すておかん、入牢じゆらう申附まうしつける。
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
其内そのうち金港堂きんこうどう云々しか/″\の計画が有るとふ事が耳につた、其前そのぜんから達筆たつぴつ山田やまだが思ふやうに原稿げんかう寄来よこさんとあやしむべき事実が有つたので、捨置すておがたしと石橋いしばしわたしとで山田やまだあひきました
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
塚田巡査は職務上これを捨置すておく訳には行かぬ。取敢とりあえその屍体を町へ運ばせて、おのれその報告書を作る準備にとりかかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
傳「それが誠に有るので、実は昨日な証拠を拾って持って居りますが、開封致しては相済みませんが、捨置すておかれませんから心配して開封いたしましたが、山平へ送る艶書を拾いました」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
が、うしても其儘そのままには捨置すておかれぬので、最後には畚にしかくくり付けて、遂に彼女かれを上まで運び出した。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
われ不届ふとゞきものだ、手前の亭主はお構い者で、聞けば商人あきんどや豪家へ入り、強請ゆすりかたりをして衆人を苦しめると云う事はかねて聞いてったが、此の文治郎が本所にうち捨置すておく訳にはいかん
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)