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ほうてき
ふりがな文庫
“
抛擲
(
ほうてき
)” の例文
しかもその記実たる自己が見聞せる総ての事物より句を探り
出
(
い
)
だすに非ず、記実の中にてもただ自己を離れたる純客観の事物は全くこれを
抛擲
(
ほうてき
)
し
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
しかし、この事件の開始と同時に、ある一つの遠心力が働いて、そうしてその力が、関係者の圏外はるかへ
抛擲
(
ほうてき
)
してしまった一人があったのですよ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
私は一二度博士がなぜ専門の物理化学を
抛擲
(
ほうてき
)
して、とつじょ蜘蛛の研究に従事せられたのかということをきいてみたが、博士は笑って答えられなかった。
蜘蛛
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
これを
抛擲
(
ほうてき
)
して顧みざらんか、その極はついに不幸なる真の戦乱が勃発せぬとは限らぬ。禍機は
此処
(
ここ
)
に存在する。
永久平和の先決問題
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
重田
(
しげた
)
さんが
立寄
(
たちよ
)
った。重田さんは
隣字
(
となりあざ
)
の人で、気が少し変なのである。
躁暴狂
(
そうぼうきょう
)
でもなく、
憂欝狂
(
ゆううつきょう
)
と云う訳でもなく、唯家業の農を
抛擲
(
ほうてき
)
してぶらぶら歩いて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
他の郵便事務は殆ど
抛擲
(
ほうてき
)
されてしまうような始末を招来したので、その混雑を防ぐために、明治三十九年の年末から年賀郵便特別扱いということを始めたのである。
年賀郵便
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
内外の多事多端なる責任の地位を
抛擲
(
ほうてき
)
して急行しつつあるものでしたが、その秘策のいかなるものであって、成功すべきや、せざるべきやは未来の疑問としましても
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そしてそのためには仕事自体の持つ形式的な優位性などはすっかり
抛擲
(
ほうてき
)
してしまうほうがいい。
演技指導論草案
(新字新仮名)
/
伊丹万作
(著)
二人はもう
黄色
(
きいろ
)
に
塗
(
ぬ
)
った科長室の
扉
(
ドア
)
の前に立っていた。藤田大佐は科長と呼ばれる副校長の役をしているのである。保吉はやむを得ず弔辞に関する芸術的良心を
抛擲
(
ほうてき
)
した。
文章
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
われわれが社会を問題とせずして、文学を問題としているとき、最早やわれわれには、コンミニズム文学は、問題から
抛擲
(
ほうてき
)
されるべき問題たる素質を持って来たのである。
新感覚派とコンミニズム文学
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
かつ
惟
(
おもえ
)
らく、
儂
(
のう
)
は
固
(
もと
)
より無智無識なり、しかるに今回の
行
(
こう
)
は、実に大任にして、内は政府の改良を
図
(
はか
)
るの手段に当り、外は以て外交政略に関し、身命を
抛擲
(
ほうてき
)
するの栄を受く
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
倫理学でさえ今日では価値体系の設定を
抛擲
(
ほうてき
)
してしかも
狡猾
(
こうかつ
)
にも平然としている状態である。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
「いや、ここ久しく、朝廷におかれても、遷都後の内政にいそがしく、天下の事は
抛擲
(
ほうてき
)
した形になっていますが、それでは、帝室のご威光を
遍
(
あまね
)
からしめるわけにゆきません」
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平常
(
ふだん
)
の廣介であったら、それ丈けの恐怖で、もう十分万事を
抛擲
(
ほうてき
)
して逃出したに相違ありません。が、彼は、さして驚く様子もなく、さて次の段取りにと取りかかるのでした。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
切詰
(
きりつ
)
めた予算だけしか有しておらぬことであるから、当人は人一倍
困悶
(
こんもん
)
したが、どうも病気には勝てぬことであるから、
暫
(
しばら
)
く学事を
抛擲
(
ほうてき
)
して心身の保養に
力
(
つと
)
めるが
宜
(
よ
)
いとの勧告に従って
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それもこの冒険の賜物であったとも言える。青起画伯は、帰来あの冒険の印象、偉大な自然の黙示に打たれて、それまでの美意識を
抛擲
(
ほうてき
)
せざるを得なくなった、と真心から語るのであった。
登山は冒険なり
(新字新仮名)
/
河東碧梧桐
(著)
その仏教に関するものは
概
(
おおむ
)
ね圏外に
抛擲
(
ほうてき
)
せらるるに非ざれば、すなはち過度もしくは見当違ひの非難を受くるに過ぎざりしが、近時新史学の研究せらるるに及びて、次第にその偏見なりしを発見し
仏教史家に一言す
(新字旧仮名)
/
津田左右吉
、
小竹主
(著)
全く
思料
(
しりょう
)
の外に
抛擲
(
ほうてき
)
してしまいます。
非人道的な講和条件
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
しかもその記実たる自己が見聞せるすべての事物より句を探り
出
(
い
)
だすにあらず、記実の中にてもただ自己を離れたる純客観の事物は全くこれを
抛擲
(
ほうてき
)
し
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
意地悪いお雪ちゃんいじめを
抛擲
(
ほうてき
)
して、そうして疑問をかけたのを、竜之助がうなずいて
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「董卓が洛陽を捨てたのは、李儒の献策で、余力をもちながら、自ら先んじて、都府を
抛擲
(
ほうてき
)
したものだ。——それを一万やそこらの小勢で、追討ちをかけるなど、曹操もまだ若い」
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わが諸君に対するの義務は、
畢竟
(
ひっきょう
)
一身を
抛擲
(
ほうてき
)
して、内地に止まる人に好手段を与うるの犠牲たるのみなれば、決死の壮士少数にて足れり、何ぞ公私を顧みざる如きの人を要せんやと。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
一切を
抛擲
(
ほうてき
)
して先ず神を見る可く全力を傾注する勇気が無い、と嘆息して帰った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
軍事科学の書物を
抛擲
(
ほうてき
)
して、
専
(
もっぱ
)
ら、キリスト教の書物を読むことになったのです。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
俄然として
醒
(
さ
)
めて、そうして声のする方を見ると、今し道庵が、二人の雲助のために無理無態に駕籠の中に押込まれて、担ぎ去られる瞬間でしたから、すっくと熊を
抛擲
(
ほうてき
)
して立ち上りました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
正当の職業である薬草取りの一日の業を
抛擲
(
ほうてき
)
してしまって、
生命
(
いのち
)
がけでこの一羽を巣の中から捕獲して来は来たものの、その前後の処分法については、あまり考慮をめぐらしていなかったのです。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼等は測量のことも
抛擲
(
ほうてき
)
して、岩角に立って、黒灰浦の方面ばかりを激昂する
面
(
かお
)
で見つめながら、使者の返答いかにと待っているが、その使者が容易には帰って来ないのが、いよいよもどかしい。
大菩薩峠:28 Oceanの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
“抛擲”の意味
《名詞》
抛擲(ほうてき)
投げ捨てること。投げうつこと。
放り出すこと。
(出典:Wiktionary)
抛
漢検1級
部首:⼿
7画
擲
漢検1級
部首:⼿
18画
“抛”で始まる語句
抛
抛棄
抛物線
抛出
抛込
抛下
抛入
抛却
抛合
抛捨