房々ふさ/\)” の例文
さいはひにして一人ひとりではひきれぬほど房々ふさ/\つてるのでそのうれひもなく、熟過つえすぎがぼて/\と地にちてありとなり
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ほっそりした肩つき、可愛らしい頭の恰好かっこう、まさしくかの人に相違ない。髪をでゝみると、しなやかな毛の房々ふさ/\としたのが氷のように冷めたく触る。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
活々いき/\とした赤い健康さうな可愛い形をした唇、きずのない揃つた輝いた齒、小さなくぼのある顎、房々ふさ/\としたあり餘る程の髮のよそほひ——短かく云へば
今しも書生の門前をうはさして過ぎしは、此のひとの上にやあらん、むらさき単衣ひとへに赤味帯びたる髪房々ふさ/\と垂らしたる十五六とも見ゆるは、いもとならん、れど何処いづこともなく品格しないたくくだりて
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
て、ちがふもの——はいぶよはいはうるさがられ、ぶよこはがられてます。ぶよひとをもうまをもします。あのながくて丈夫ぢやうぶうま尻尾しつぽ房々ふさ/\としたは、ぶよひ拂はらのにやくつのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
晋齋もいろ/\勧めて見ますが何うも承知しないんであぐねております。するとお若は世を味気あじきなく思いましたやら、房々ふさ/\したたけの黒髪根元からプッヽリ惜気おしげもなく切って仕舞いました。
朝な夕な店頭に据わって眺め暮らして居る銀座通りの光景が、やゝともすると燦爛さんらんたる宝石の羅列られつするように見えたり、房々ふさ/\とした女の黒髪ののたくるように見えたりする。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そのときの彼女は、紫紺色の絹の着物を着て、兩腕と首をあらはにしてゐた。彼女の唯一の裝飾かざりは自然の捲毛のつくろはぬ美しさで、肩に波打つ栗色の房々ふさ/\とした髮であつた。