悪寒さむけ)” の例文
旧字:惡寒
こんな筈はなかったのにと、白シャツ一枚でしきりに我と我が喉のくびり方を研究している中に悪寒さむけを覚えて、用心の為め又三四日休んだ。
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
眼にも見えないその怪異に取りかれたものは、最初に一種の瘧疾おこりにかかったように、時々にひどい悪寒さむけがして苦しみ悩むのである。
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『風邪かも知れませんが、……先刻支庁から出て坂を下りる時も、妙に悪寒さむけがしましてねす。余程よつぽどぬくい日ですけれどもねす。』
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ゆうべも深更まで側において、興のつきないまま夜更よふかしをさせた。悪寒さむけがするとつぶやいていたが、丈夫な自分にはつい思いやりが足らなかった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは急に天気が曇って来たせゐか、冷え/″\した空気が流れこんで来て、彼女は悪寒さむけがして顔色が悪くなった。
秋は淋しい (新字旧仮名) / 素木しづ(著)
うとうととしていると何だか急にゾーッと悪寒さむけを覚えたので思わず窓の簾越すだれごしに庭の方を見るとハット吃驚びっくりした
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
僕は変に不愉快な悪寒さむけがしたので、これは空気がしめっているせいであろうと思った。諸君は海水で湿しけている船室キャビンの一種特別なにおいを知っているであろう。
闇太郎は、そういうお初の、みだらな、あでやかな笑いを見ると、あやしい悪寒さむけのようなものを覚えた。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
静かな境内けいだいの入口に立った彼は、始めて風邪ふうじゃを意識する場合に似た一種の悪寒さむけを催した。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
志「お前どう云う塩梅で、大方風がこうじて熱となったのだろう、悪寒さむけでもするかえ」
そこで、彼は悪寒さむけを感じて熱病にかかるとともに、幽霊が出るなどとつまらない囈語たわことをいうようになった。要するに、過労が彼の病気の原因ともなり、死因ともなったので、可哀そうなものさ。
くもった日や暗い夜に、かの喬生と麗卿とが手をひかれ、一人の小女が牡丹燈をかかげて先に立ってゆくのをしばしば見ることがあって、それに出逢ったものは重い病気にかかって、悪寒さむけがする
世界怪談名作集:18 牡丹灯記 (新字新仮名) / 瞿佑(著)
帰宅するとまもなく、彼女は激しい悪寒さむけに襲われ、ついで高い熱が出た。開けている下瞼の方から、大波のように真黒いものが押しよせて来て暫くの間は、何も、見えも聞えも、しないようになった。
日は輝けり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「私にはなんにも見えませんね。しかし実を言うと、鏡を見たときに私もなんとなくぶるぶる悪寒さむけがしました。もっとも、すぐになんでもなくなりましたが……。では、もう一度やって見てください」
「ウム、丹下左膳に悪寒さむけをおぼえさせるのア、おめえばかりだぞ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかしその衣服はびしょ湿れになっていて、からだには悪寒さむけがするので、彼は早々にそこを立ち去って、近所の村びとの家に一夜を明かした。
と、秋夜の天を仰ぎ見ていたが、突然、何事かに驚き打たれたように、悪寒さむけが催してきたといって内にかくれた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「私、背中から水を浴びせられるように悪寒さむけがして、とても起きちゃいられませんわ」
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「わたしは、またすこし悪寒さむけがしてきましたから、これで失礼を」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
雨は小歇おやみなく降つてゐる。洋傘こうもりを持つてゐる手先は痛いやうにつめたくなつて来る。からだも何だか悪寒さむけがして来た。
赤い杭 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
その夕、寝床とこにつくなり登子へ悪寒さむけを訴えて、子供のように彼女のかいなにしがみついた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆうべ不思議な夢におそわれたせいか、彼は悪寒さむけがして頭が痛んだ。叔父や叔母は夜露にあたって冷えたのであろうと言った。叔母は薬をせんじてくれた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「若い女子おなごでな。店さきに休んでいる間に、悪寒さむけがするというので、捨ててもおけず、奥の寝小屋を貸しておいたところ、だんだん熱がひどうなって、どうやらむつかしい様子なのじゃ」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
医者にも大事にしろと言われたが、けさから身体に悪寒さむけがして、胸のあたりが痛んでならなかった。咳をするたびに、あばらへ強くひびいてせつなかった。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
爪は、草の根をつかんでいたが、その手の甲へ、ダラダラよだれが垂れるだけだった。腰は鉛の如く重く、満身に悪寒さむけだけが、走り抜ける。口がゆがむ、声は声のみで言葉となって出てこない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いいえ、別に……」と、お北はゆうべと同じような返事をしていたが、自分でも少し悪寒さむけがするように感じられてきた。気のせいか、蟀谷こめかみもだんだん痛み出した。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
数日前から、義貞はふと、不規則な熱と悪寒さむけを訴えていた。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女は明るい灯のかげを恐れるように、絶えず伏目になっていたが、その眼にはいつの間にか涙がいっぱいに溜まっていた。胸もせつなくなってきた。こめかみも痛んで来た。悪寒さむけもして来た。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
悪寒さむけにでも襲われたようにすくんだ。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くもった日や暗い夜に、かの喬生と麗卿とが手をひかれ、一人の小女が牡丹燈をかかげて先に立ってゆくのをしばしば見ることがありまして、それに出逢ったものは重い病気にかかって、悪寒さむけがする
「何となく悪寒さむけがする」だの
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
曹操は、悪寒さむけがしてきた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)