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悒鬱
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ゆううつ
ふりがな文庫
“
悒鬱
(
ゆううつ
)” の例文
葉子はなんという事なく
悒鬱
(
ゆううつ
)
になって古藤の手紙を巻きおさめもせず
膝
(
ひざ
)
の上に置いたまま目をすえて、じっと考えるともなく考えた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
自分自身の話に
亢奮
(
こうふん
)
したらしく眼は輝いて頬に血の気が上り、先刻のような寒そうな
悒鬱
(
ゆううつ
)
なようすは、どこにも残っていなかった。
流転
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
この艇内に青春を
鋳潰
(
いつぶ
)
すと決ったことの
悒鬱
(
ゆううつ
)
さで、機嫌はよくなかったので、魚戸と喋ることは僕の方からも避けていたといえる。
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
報道の末尾まで読んでくると、
悒鬱
(
ゆううつ
)
な、宿命的な文字が彼の目を暗くした。生命とりとめる見込、としるされてゐるのだつた。
蒼茫夢
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
私学校の変に次いで、西郷
起
(
た
)
つとの報が東京に達すると、政府皆色を失った。大久保利通は、
悒鬱
(
ゆううつ
)
の余り、終夜
睡
(
ねむ
)
る事が出来なかったと云う。
田原坂合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
自分の考えている事や、自分の今在るということ、そして妻のことなどがかれをかれの永い間持ち腐らせている
悒鬱
(
ゆううつ
)
にまで追い込んだのである。
みずうみ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
彼は偉大なのらくら者、
悒鬱
(
ゆううつ
)
な野心家、華美な
薄倖児
(
はっこうじ
)
である。彼を絶えず照した怠惰の青い太陽は、天が彼に
賦与
(
ふよ
)
した才能の半ばを蒸発させ、
蚕食
(
さんしょく
)
した。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
車は
駛
(
は
)
せ、景は移り、境は転じ、客は改まれど、貫一は
易
(
かは
)
らざる
他
(
そ
)
の
悒鬱
(
ゆううつ
)
を
抱
(
いだ
)
きて、
遣
(
や
)
る方無き五時間の
独
(
ひとり
)
に
倦
(
う
)
み
憊
(
つか
)
れつつ、始て
西那須野
(
にしなすの
)
の駅に下車せり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
既に藤の花も散り、あのじめじめとした
悒鬱
(
ゆううつ
)
な梅雨が明けはなたれ、藤豆のぶら下った棚の下を、
逞
(
たく
)
ましげな熊ン蜂がねむたげな羽音に乗って飛び交う……。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
往年の可楽君の
悒鬱
(
ゆううつ
)
、今に至るも察してあまりあるものである。あるいは全くその演者の演ぜざる物語にいい加減の名前を附し、発表されることも少なくなかった。
我が円朝研究:「怪談牡丹灯籠」「江島屋騒動」「怪談乳房榎」「文七元結」「真景累ヶ淵」について
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
が、こんな話しになると、さすが死を決した面々もだんだん
悒鬱
(
ゆううつ
)
になって、しまいには皆黙ってしまった。聞いている小平太には、いよいよ自分の用事が
滑稽
(
こっけい
)
に見えてきた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
悒鬱
(
ゆううつ
)
な
四月
(
うづき
)
空、桜は散りましたが、梅雨前の気圧が、妙に人間の心を灰色に沈ませます。
銭形平次捕物控:039 赤い痣
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
真個に、まざまざと自分のところへかえって来た彼が、あの深い、大きな熱情で、しっかり抱擁して呉れた、あの恍惚を、あの感触を眼ざめて、あっけない夢だと知ると、妙な
悒鬱
(
ゆううつ
)
が心を閉じ込めた。
日記:06 一九二〇年(大正九年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
或る時は彼れを怒りっぽく、或る時は
悒鬱
(
ゆううつ
)
に、或る時は乱暴に、或る時は機嫌よくした。その日の酒は
勿論
(
もちろん
)
彼れを上機嫌にした。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そして彼の胸中には、事件を解決するたびに経験するあの
苦
(
に
)
が
酸
(
ず
)
っぱい
悒鬱
(
ゆううつ
)
が、また例の調子で
推
(
お
)
し
騰
(
のぼ
)
ってくるのであった。
爬虫館事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
定めし一人で
悒鬱
(
ゆううつ
)
がつてゐることだらうが訪ねて来ればいいものをと待ち構えてゐても、全く姿を見せなかつた。
雨宮紅庵
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
君ら二人の目は
悒鬱
(
ゆううつ
)
な熱に輝きながら、互いに
瞳
(
ひとみ
)
を合わすのをはばかるように、やや燃えかすれたストーブの火をながめ入る。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
軍隊を
狙撃
(
そげき
)
する軍隊なのである。そのような、不可解な軍隊を向うに廻して、東山少尉の部下は、
敵慨心
(
てきがいしん
)
を起す前に、
悒鬱
(
ゆううつ
)
にならないわけにゆかなかった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
一向埒のあかないうちに遠慮会釈もなく締切の期日がとつくに過ぎ去つてしまつたことに由来する
悒鬱
(
ゆううつ
)
極まる自責の念が手伝つて、いささか
無役
(
むえき
)
に暗澹としすぎたのかも知れません。
日本人に就て:――中島健蔵氏へ質問――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
雨などが降りくらして
悒鬱
(
ゆううつ
)
な気分が家の中に
漲
(
みなぎ
)
る日などに、どうかするとお前たちの一人が黙って私の書斎に
這入
(
はい
)
って来る。
小さき者へ
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
女探偵
(
おんなたんてい
)
の
悒鬱
(
ゆううつ
)
什器破壊業事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼はほとんど
悒鬱
(
ゆううつ
)
といってもいいような不愉快な気持ちに沈んで行った。おまけに二人をまぎらすような物音も色彩もそこには見つからなかった。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
もらし所のないその活気が運動もせずにいる葉子のからだから心に伝わって、一種の
悒鬱
(
ゆううつ
)
に変わるようにさえ思えた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
疳
(
かん
)
のために背たけも伸び切らない、どこか病質にさえ見えた
悒鬱
(
ゆううつ
)
な少年時代の君の面影はどこにあるのだろう。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
孤独に親しみやすいくせにどこか殉情的で人なつっこい私の心は、どうかした拍子に、このやむを得ない人間の運命をしみじみと感じて深い
悒鬱
(
ゆううつ
)
に襲われる。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
葉子はこれまでの見窮められない不思議な自分の運命を思うにつけ、これから先の運命が空恐ろしく心に描かれた。葉子は不安な
悒鬱
(
ゆううつ
)
な目つきをして店を見回した。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
底のない
悒鬱
(
ゆううつ
)
がともするとはげしく葉子を襲うようになった。いわれのない激怒がつまらない事にもふと頭をもたげて、葉子はそれを押ししずめる事ができなくなった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
やせて
悒鬱
(
ゆううつ
)
になった事から生じた別種の美——そう思って葉子がたよりにしていた美もそれはだんだん
冴
(
さ
)
え増さって行く種類の美ではない事を気づかねばならなくなった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
と事もなげに答えるつもりだったが、自分ながら
悒鬱
(
ゆううつ
)
だと思われるような返事になっていた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
誰か憎まない人があろう。それだから人間として誰か
悒鬱
(
ゆううつ
)
な
眉
(
まゆ
)
をひそめない人があろう。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
この問題は屡〻私達を
悒鬱
(
ゆううつ
)
にする。この問題の決定的批判なしには、神に対する悟りも、道徳律の確定も、科学の基礎も、人間の立場も凡て不安定となるだろう。私もまたこの問題には永く苦しんだ。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
悒
漢検1級
部首:⼼
10画
鬱
常用漢字
中学
部首:⾿
29画
“悒”で始まる語句
悒
悒々
悒欝
悒悒
悒然