引明ひきあけ)” の例文
剥出し吠付ほえつくにぞお菊は驚き思はずも裏口の障子を引明ひきあけ駈込かけこまんとするに臺所に居たる男共見咎みとがめ誰だ/\と言ながら立出窶然みすぼらしき姿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
夜の引明ひきあけになると、花はあわただしくも自らその唇を閉ぢた。夏の太陽の押しつけがましい接吻をさも厭がるかのやうに。
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
素人八卦は当ったのかわれながら不思議なぐらいだが、幽明の境を弁えぬ凝性こりしょうの一念迷執、真偽虚実をよそに、これはありそうなことだと藤吉は思った。帰り着いたのは短夜の引明ひきあけだった。
そとなるはおほゝとわらふて、お父樣とつさんわたし御座ござんすといかにも可愛かわゆこゑ、や、れだ、れであつたと障子しようじ引明ひきあけて、ほうおせきか、なんだな其樣そんところつてて、うしてまたこのおそくにかけて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
父様とつさん私で御座んすといかにも可愛かわゆき声、や、れだ、誰れであつたと障子を引明ひきあけて、ほうおせきか、何だなそんなところに立つてゐて、どうして又このおそくに出かけて来た、車もなし、女中も連れずか
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
引明ひきあけて金三四十兩懷中ふところに入れ立上たちあがる處に横面よこつらひやりとさはる物あり何かとうたがひ見れば縮緬ちりめん單物ひとへもの浴衣ゆかた二三枚と倶に衣紋竹えもんだけに掛てありしにぞどくくはさら迄と是をも引外ひきはづして懷中へ捻込ねぢこみ四邊あたりうかゞひ人足の絶間たえま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)