廉物やすもの)” の例文
郵船会社の寄港地だけに日本の雑貨を店頭に見いだす事のすくなく無いのも勿論粗末な廉物やすものばかりであるがうれしかつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
見まわすと、窓の上、四方の板壁には、フランクリン、リンコルン、ビスマークだ、西郷南洲、そうした世界的英雄の廉物やすものの三色版がさも大業おおぎょうに掲げられてあった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
不完全な風船は、廉物やすものの空気枕みたいに、どこからともなく瓦斯ガスが漏れて、段々重くなって行った。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
冥途めいどからほとけ宿やどつたしるしだといつてかなら提灯ちやうちん墓地ぼちからけられるのである。おつぎは勘次かんじふところいくらかあたゝかにつたので、廉物やすものではあるが中形ちうがた浴衣地ゆかたぢこしらへてもらつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
廉物やすもののおきゃん達が最初に吊るし上げられて
武「なにくも無い、ほんの廉物やすもので」
その横の廉物やすもの仏蘭西皿フランスざら
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
びんの腰をわらで巻いた赤い葡萄ぶだう酒はうせ廉物やすものだらうが、巴里パリイで飲んだ同じ物より本場だけに快く僕を酔はせた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
その真中に四角なテーブルが一つ、その四方にとう張りの廉物やすものの椅子が一つずつ置いてある。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこでこの肥って善良な七面鳥が奥の室から廉物やすものの蓄音機を、耳環をちらちらでかかえ出して来て、窓際の小さな卓子テーブルに据えると、煤色の大きな喇叭ラッパの口を私たちの方へ差向けたものだ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
美奈子は其の金子かねをも大部分生活くらしの方に遣い込んで妹が上京して来た時余り体裁きまりが悪いので、言訳いひわけばかりに古道具屋を探して廉物やすものを買つて来たのが此の箪笥であつた。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
今度という今度、廉物やすものではあるが私は腕時計というものを初めてあがなった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
廉物やすものの、摸造の爪哇ジヤワ更紗
南洋館 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)