幾通いくつう)” の例文
幾度いくたび幾通いくつう御文おんふみを拝見だにせぬ我れ、いかばかり憎くしとおぼしめすらん。はいさばこのむね寸断になりて、常の決心の消えうせん覚束おぼつかなさ。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
入塾志願取り消しの電報は、その間にもさらに幾通いくつうかとどいたが、次郎はもうそれを大して気にはしなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
余が博士を辞退した手紙が同じく新聞紙上で発表されたときもまた余は故旧新知こきゅうしんちもしくは未知のあるものからわざわざ賛成同情の意義に富んだ書状を幾通いくつうも受取った。
行李こうりの底から幾通いくつうかの手紙と一葉の写真を取出して、写真を眺めては手紙を読み手紙を読んでは写真を眺め、さて寝る時には、その写真を彼女の豊満な乳房におしつけ
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
幾度いくたび幾通いくつう御文おんふみ拜見はいけんだにせぬれいかばかりにくしと思召おぼしめすらん、はいさば此胸このむね寸斷すんだんになりてつね決心けつしんえうせん覺束おぼつかなさ
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
本心ほんしんにはるまじきふみ趣向しゆかう案外あんぐわいのことにて拍子へうしよくき、文庫ぶんこをさたまひしとはがもの、と一たびいさみけるが、それよりのち幾度いくど幾通いくつうかきおくりしふみに一たび返事へんじもなく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
じんすけもとより吾助ごすけ贔負びいきにて、此男このをとこのこと一も十も成就じやうじゆさせたく、よろこかほたさの一しんに、これまでのふみ幾通いくつう人目ひとめれぬやうとヾこほりとヾけ、令孃ひめこヽろらず返事へんじをとめしが
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)