幽閉ゆうへい)” の例文
源十郎はそうとは知らずにそのしりをそっくりおさよ婆さんへ持ってきて、今までお艶を幽閉ゆうへいしておいた納戸へこんどはおさよを押しこめ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
私の胸の中に幽閉ゆうへいされている眠れる王子は、永遠に目ざめるときが来ないのではなかろうかと、私はそんなことをぼんやり考えていたのである。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
そして、その本拠が製氷工場であること、倭文子さん達がそこに幽閉ゆうへいされたことが分ると、僕はすぐ、谷山の恐ろしい目論見もくろみを感づいたのです。……
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
また、セント・ヘレナの島に幽閉ゆうへいされた英雄えいゆうが、荒寥こうりょうたる岩頭に立って、胸に雄志をいだきながら大海原おおうなばらをながめやっている姿を見たこともあるのです。
英雄一たびその志すところに失敗せば、かの行為は、奸賊かんぞく強盗ごうとうの行為をもって目せらる。我らは衆人環視のうちに捕えられいましめられ、暗獄あんごくのうちに幽閉ゆうへいせられる。
船医の立場 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
もうまもなく救助きゅうじょの人たちがトンネルをぬけて、水について来ることをわたしたちは知った。けれどもこうなってから幽閉ゆうへい最後さいごの時間がこのうえなく苦しかった。
越後中将光長えちごちゅうじょうみつながほうを没収して幽閉ゆうへいし、連累れんるいをことごとく処分に付したのだから、当時の官民は
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうかと云って、彼の生命をつことは、今日あの辺に巨富きょふようしている大人連たいじんれんの怒りを買うことであって、それは不利益だ。そこで漢青年を、ソッと幽閉ゆうへいして置くことになったのだ。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その後蘇武があなぐらの中に幽閉ゆうへいされたとき旃毛せんもうを雪に和してくらいもって飢えをしのいだ話や、ついに北海ほっかい(バイカル湖)のほとり人なき所にうつされて牡羊おひつじが乳を出さば帰るを許さんと言われた話は
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「親を幽閉ゆうへいして国をうばいました」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
もはばからず鼻高々と誇りがましきいまのことば……お艶ッ! 貴様、なんだな、先日本所の屋敷に幽閉ゆうへいされおった際に——
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
直義方の桃井直常や斯波しば、石堂、上杉らの党は、そのご残兵を集めて、延福寺に幽閉ゆうへい中の直義の身を奪回しようと計っているし、宮方の新田義宗、義興よしおき脇屋わきや義治などの軍は
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ああ、谷博士は、怪人のために病院から連れだされ、研究所の最地階に幽閉ゆうへいされ、どんなに苦しめられていることでしょうか。博士が責めころされないまえに、一刻いっこくも早く救いだしてください。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
関ヶ原で捕えられて先頃からここに幽閉ゆうへいされている囚人めしゅうど頼朝であった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ときどき、源氏閣にはいあがってきて、幽閉ゆうへいされている咲耶子とは、いつのまにかなかよしになっていたが、今夜も、そのなかよしの人のいる三そうのうえの棟木むなぎへでもきて、腕枕うでまくらていたものとみえる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
送別の詩が、わざわいして、象山も国元松代で幽閉ゆうへいの身となった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)