ちつ)” の例文
喜んで(〔紺紙金泥の〕)経文四ちつとサッキャア・パンジットの拵えたチベット語の仏教辞典(筆記物)とその外二、三の書物をくれました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
『古史伝』の第二ちつだ。江戸の方で、彫板、印刷、製本等の工程を終わって、新たにでき上がって来たものだ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
米國べいこくのエドワルド、エス、モールスが、明治めいぢ十二ねんおいて、はじめて此所こゝ遺跡ゐせき發見はつけんし、うして大發掘だいはつくつこゝろみられた記事きじは『理科會粹りくわくわいすゐ』のだいちつとして
九輯となると上中下の三ちつを予定し、上帙六冊、中帙七冊、下帙は更に二分して上下両帙の十冊とした。それでもマダ完結とならないので以下は順次に巻数を追うことにした。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
彼女は時としてちつ入のままそれを机の上から取って帯の間にはさんで外出する事さえあった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
古典文芸の鑑賞につちかわれる一種の雰囲気である点であって、その「詩」をつくり出すために、定家は『白氏文集はくしもんじゅう』の第一・二ちつを読めと、『詠歌大概』にも『毎月抄』にものべており
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
近頃はやる手文庫の中張うちばりとか、又草双紙くさぞうしちつなどに用いたら案外いいかも知れないと思ったので、其場の出来心からわたくしは古雑誌の勘定をするついでに胴抜の長襦袢一枚を買取り
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私が金をとったら成り立たなかったからである。凡ては友人の協力的好意の賜物であった。この事も珍しい出来事であろう。芹沢君は布装幀のほかに一カ年分を入れるちつをも作ってくれた。
白絹でつつんで、さらに、ちつで抱いた愛らしい一帖いちじょう経本きょうほんがはいっていた。紺紙に金泥きんでいの細かい文字が、一字一字、精緻せいちな仏身のように、端厳たんげんな気と、精進しょうじんの念をこめて、書かれてあった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国手、一個の書架しょだな抽斗ひきだし、それには小説、伝奇の類が大分ちつを揃えて置かれた——中から、金唐革きんからかわの手箱を、二個出して、それを開けると無造作に、莞爾々々にこにこしながら卓子の上に並べられた。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「はてな?」と呟いた右近丸ツトその書物を取り上げたが、まずちつからスルリと抜き出し、それからパラパラとめくってみた。と、どうだろう、何にも書いてない。全体がただの白紙なのである。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いつも紅茶のかすが溜っているピクニック用の湯沸器。ちつと離ればなれにころがっている本の類。紙切れ。そしてそんなものを押しわけて敷かれている蒲団。喬はそんななかで青鷺あおさぎのように昼は寝ていた。
ある心の風景 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
古書のちつのぼる鼠の尾は引きて夜のしはぶきに乱れたりけり
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ちつにはいつた画帖風の美しい装釘だつた。
続戦争と一人の女 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
青史のちつ御座みくらする
騎士と姫 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
「この第一ちつの方は伊那いなの門人の出資で、今度できたのは甲州の門人の出資です。いずれ、わたしも阿爺おやじと相談して、この上木の費用を助けるつもりです。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
英語の通弁官をかいしネパール語で「この書物は沢山はない。ただ四十一ちつだけ集めることが出来た。これはあなたの贈物に対する返礼として上げるのであるからそのつもりで受取るがよい」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
見れば背後うしろの床ノ間に、倍実のぶさね筆の山水の軸が、大きくいっぱいに掛けられてあり、脇床の棚の上にはちつに入れられた、数巻の書が置かれてあり、万事正式の布置であって、驚くことはなかったが
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今じゃ第四ちつまで進行しております。一帙四巻としてありますが、もう第十六のまきを出しました。お聞き及びかどうか知りませんが、その上木じょうぼくを思い立ったのは座光寺の北原稲雄です。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そうですよ。去年の八月に、ようやく第一ちつを出しましたよ。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)