かく)” の例文
昔、中宮がおかくれになった春には、桜が咲いたのを見ても、『野べの桜し心あらば』(深草の野べの桜し心あらば今年ばかりは墨染めに咲け)
源氏物語:42 まぼろし (新字新仮名) / 紫式部(著)
ですからその後女王がおかくれになったということがチベットに伝わるや、チベット国民は大いに哀悼あいとうの情を表すると同時に
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「今年の寒さといつたらないよ。むかし堯の天子がおかくれになつた年の冬が——確かあの冬がこんなだつたと思ふが……」
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
されど世にあらせ給ふほどは孝信かうしんをまもりて、六〇ゆめいろにも出さざりしを、かくれさせ給ひてはいつまでありなんと、たけきこころざしをおこせしなり。
かくして天皇がおかくれになつてから、オホサザキの命は天皇の仰せのままに天下をウヂの若郎子に讓りました。
おもへば不思議や、長寛二年の秋八月廿四日は果敢なくも志渡しどにてかくれさせ玉ひし日と承はれば、月こそかはれ明日は恰も其日なり。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
帝様へ諸国から貢物みつぎものを献上なさる時は、いつもこの道を通ったとやらで、その帝様が奈良田でおかくれになりました時、それと聞いて土地の人が、その貢物を横取りしてしまってにわかに富んだから
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「八月の十日あまり六日にや、秋露に侵されさせ給ひてかくれましましぬと聞えし。るが中なる夢の世、今に始めぬ習ひとは知りながら、かず/\目の前なる心地して、おいの涙もかきあへねば筆の跡さへ滞りぬ」と『神皇正統記』の中で慟哭どうこくして居る。
四条畷の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
この人の半分にも足らないでおかくれになったではないか、はかないのが姿である人生であるからと源氏は思いながらも、人格がいいともいえない
源氏物語:20 朝顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
太祖顧みて殷に語りたまわく、なんじ老成忠信、幼主を託すべしと。誓書および遺詔を出して授けたまい、あえて天にたがう者あらば、朕がためこれて、と言いおわりてかくれたまえるなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「御両親が早くおかくれになりまして以来、春を春でもないように寂しく見ておりましたが、今日はじめて春を十分に享楽いたしました。また伺いましょう」
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
故院がおかくれになりましたころから、人生の無常が深く私にも思われまして、出家の願いを起こしながらも心弱く何かのことに次々引きとめられておりまして
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
麗景殿れいげいでん女御にょごといわれた方は皇子女もなくて、院がおかくれになって以後はまったくたよりない身の上になっているのであるが、源氏の君の好意で生活はしていた。
源氏物語:11 花散里 (新字新仮名) / 紫式部(著)
院の陛下がおかくれになってからは、心細いものに私はなって、年のせいからも泣かれる日が多いところへ、またこの宮が私を置いて行っておしまいになったので
源氏物語:20 朝顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
院がおかくれになりまして以来、すべてのことが同じこの世のことと思われませんような変わり方で、思いがけぬ所罰も受けまして、遠国に漂泊さすらえておりましたが
源氏物語:20 朝顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
以前の伊予介いよのすけは院がおかくれになった翌年常陸介ひたちのすけになって任地へ下ったので、昔の帚木ははきぎもつれて行った。
源氏物語:16 関屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
院が最後まで秘密の片はしすらご存じなしにおかくれになったことでも、宮は恐ろしい罪であると感じておいでになったのに、今さらまた悪名あくみょうの立つことになっては
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「もう夜居よいなどはこの健康でお勤めする自信はありませんが、もったいない仰せでもございますし、おかくれになりました女院様への御奉公になることと思いますから」
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そのうちお后もおかくれになった。姫宮がお一人で暮らしておいでになるのを帝はお聞きになって
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
この人はおかくれになった院も、自分というもののために不快な思いにお悩まされになったかもしれぬと思うと、次の世界ででももう一度おいしたいという望みが起こり
源氏物語:44 匂宮 (新字新仮名) / 紫式部(著)
尚侍ないしのかみはおかくれになった皇太后がお住みになった二条の宮へはいって住むことになった。姫宮を心がかりに思召されたのに次いでは尚侍のことを院の帝は顧みがちにされた。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
かくれになった陛下が御終焉しゅうえんの前に私へいろいろな御遺言をなされたのだが、その中で特に六条院と今の陛下のことについては熱心に仰せられて私へお託しになったのだが
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
八月は左大将の忌月きづきで音楽のほうをこの人が受け持つのに不便だと思われたし、九月はまた院の太后のおかくれになった月で、それもだめ、十月にはと六条院は思っておいでになったが
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
この話は過去未来に広く関聯かんれんしたことでございましておかくれになりました院、女院様、現在国務をお預かりになる内大臣のおためにもかえって悪い影響をお与えすることになるかもしれません。
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)