小商こあきな)” の例文
「幸吉と言って、こいつは親に似ぬ堅い男だ。浅草で小商こあきないをしているのを手繰たぐって、二日前に金富町の留吉兄哥あにいが挙げて来たよ」
合わせれば、おれたち二人が里へ出て小商こあきないをやる資本もとでにはなるッてものだ。しめた、こいつア運が向いて来たのかもしれねえぞ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ま詰らん小商こあきないをするよりもこれ、一疋虫をつかめえて六百ずつになれば、子供でも出来る事だから宜かろうと頼まれましたんで
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なお行くことしばらくにして川の流れは京成電車の線路をよこぎるに際して、橋と松林と小商こあきないする人家との配置によって水彩画様の風景をつくっている。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
出さば早速さつそくむかひに來る約束なるに三四年立ども一向に沙汰さたもなければ餘儀よぎなく吉三郎は人の周旋せわにて小商こあきなひなどして親子おやこやうやく其日をおくり江戸よりむかひの來るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたくしの夫は小商こあきないをしている者で、ぜに五十びんを元手にして鴨や鵞鳥を買い込み、それを舟に積んで売りあるいて、帰って来るとその元手だけをわたくしに渡して
老父は小商こあきないをして小遣いを儲けていた。継母は自分の手しおにかけた耕吉の従妹の十四になるのなど相手に、鬼のように真黒くなって、林檎りんご葡萄ぶどうの畠を世話していた。
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
百蔵も江戸へ出て小商こあきないでもして堅気になると言い、七兵衛もそれを賛成したのに、まだこの辺にとどこおっていて、ついにこんなだいそれたことをやり出すようになったのか
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小商こあきなひ露のいく野の旅なれや 湖柳こりゅう
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「幸吉と言つて、こいつは親に似ぬ堅い男だ。淺草で小商こあきなひをしてゐるのを手繰たぐつて、二日前に金富町の留吉兄哥あにいが擧げて來たよ」
しのぎつゝ親子が涙のかわく間もなくわづかの本資もとで水菓子みづぐわしや一本菓子などならおき小商こあきなひの其のひまにはそゝぎ洗濯せんたく賃仕事ちんしごとこほあぶらあかりを掻立かきたてつゝ漸々やう/\にして取續き女心の一トすぢ神佛かみほとけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一方には百姓の片手間に小商こあきないをしているような小さい店が二、三軒つづいていた。それに囲まれた空地は五六百坪の草原に過ぎないで、芒のあいだに野菊などが白く咲いていた。
半七捕物帳:58 菊人形の昔 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
貸方かしかたからやかましく云われ、抵当物は取られ、おふくろ両人ふたり手振編笠てぶりあみがさで仕方がねえから、千住せんじへまいって小商こあきないを始めましたが、お母が長々なが/\の眼病で、とうとう眼がつぶれ、生計くらしに困り
平次は悄然せうぜんとして歸つて來ました。まことに散々です。この上は百兩の金をつくつてお時に返し、改めて十手捕繩を返上して、小商こあきなひでも始める外はなかつたのです。
いっそ小商こあきないでも始めてはどうだと申しまして、唯今の店も買ってくれました。
平造とお鶴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
思ひし深切に久八も大に喜悦よろこび何商なにあきなひを初めたらよろしからうと工夫をなせども元より大家の支配人の果なれば小商こあきなひの道を知ず右左とかく損毛そんもう多く夫而已のみならず久八は生れ付ての慈悲じひ心深くまづしき者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
稻葉屋の先々代の弟に生れた惣吉は、小網町で小商こあきなひをして居るんだ、しやくにもさはるだらうぢやないか、俺は歸りに小網町に寄つて見て、少しでも怪しいことがあれば
「世間體だけですよ。あの女がまともな小商こあきなひで、世渡りが出來るものてすか」
小商こあきなひの店のあたりを當てもなくグルグルと廻りました。
小商こあきないの店のあたりを当てもなくグルグルと廻りました。