小刀ないふ)” の例文
其外にやすりと小刀ないふ襟飾えりかざりが一つ落ちてゐる。最後さいごむかふすみを見ると、三尺位の花崗石みかげいしの台の上に、福神漬ふくじんづけくわん程な込み入つた器械が乗せてある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
余は何時いつとも無く不審を起し目科とはも何者にやと疑いたり、もとより室と室、隣同士の事とて或は燐寸まっちを貸し或は小刀ないふを借るぐらいの交際つきあいは有り
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
吾助ごすけ上手じやうずなれどうたはうなほ名人めいじんゆゑ、これを御覽ごらんれさへすれば、ぼくつと吾助ごすけひたり、てばぼく小刀ないふぼくのにて、姉樣ねえさまのごむ人形にんぎやうはお約束やくそくゆゑいたゞくのなり
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
小刀ないふわれおとらじと働かせながらも様々の意見を持出し彼是かれこれと闘わすに、余も目科も藻西太郎を真実の罪人に非ずと云うだけ初より一致して今も猶お同じ事なり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
もかきまするうたみまする騎射きしやでも打毬だきうでもおこの次第しだいわらへば、それならばきてれよ、ゆふ姉樣ねえさまかけをして、これがければぼく小刀ないふられる約束やくそくれは吾助ごすけのことからにて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
のちになぞとはヾそのうちにぼくけて、小刀ないふられるからいや、どうぞ是非ぜひいますぐかきれよ、かみふで姉樣ねえさまのをりてべし、と箒木はヽきてヽすに、づおまちなされとあわたヾしく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)