対座たいざ)” の例文
旧字:對座
その画室がしつなかほどに、煙草盆たばこぼんをはさんで、春信はるのぶとおせんとが対座たいざしていた。おせんのうぶこころは、春信はるのぶ言葉ことばにためらいをせているのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
糟谷は役所着やくしょぎのままで東京へいくつもりであるから、洋服ようふくをぬごうともせず、子どもをいたまま老人と対座たいざした。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
その奥の座敷では、造酒が、お妙を仲に長庵と対座たいざして、「此娘これが、脇坂殿よりお話のあった——」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
伊那丸と園部一学そのべいちがくがそこに対座たいざしたとき、杉戸すぎとのそとには、木隠龍太郎こがくれりゅうたろう蔦之助つたのすけ小文治こぶんじなどが、大刀をつかんで、よそながら主君しゅくんの身をまもっているぶりであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがてカイゼル氏の案内で、間もなく大月と秋田は、ささやかなサロンで比露子夫人と対座たいざした。
花束の虫 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
親身しんみになっていろいろとやさしくわれますので、わたくしほうでもすっかり安心あんしんして、勿体もったいないとはおもいつつも、いつしか懇意こんい叔父おじさまとでも対座たいざしているような、打解うちとけた気分きぶんになってしまいました。
行水ぎょうずいでもつかうように、もも付根つけねまであらったまつろうが、北向きたむきうらかいにそぼあめおときながら、徳太郎とくたろう対座たいざしていたのは、それからもないあとだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)