もら)” の例文
見てくれい。美人だぞ。眉目みめばかりか気だてもいい。一生の持ちものとして気に入ったからもらったのだ。ほかに、他意もないわさ
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はは、さやうで。手前は五年ほど掛違うて間とは会ひませんので、どうか去年あたり嫁をもらうたと聞きましたが、如何いかがいたしましたな」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
華尾先生もこのお仲間で身分のある家から女房をもらつて其縁に頼つて敢果はかない出世をしやうといふのが生涯の大望だ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
紫の羽織を着てゐた頃の綾さんの姿を思浮べると、遉に胸頭に輕いいたみを感ぜぬでもなかツた。叔父に「もらツたら何うだ。」と謂はれたことなども思出した。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「でも、条件さえ通過すれば、僕はもらうよ。ははは、きっと貰うね、おい、一本貰って行くぜ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
壮い漁師はその海嘯のためにもらったばかりの女房を失っていたが、心の顛倒てんとうがまだ収まらないし、それに女房を失った者もざらにあるので、一種の群衆心理でそれをあきらめていた。
海嘯のあと (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
周旋する人があって、彼は芽出度めでたく女房をもらった。
因果 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
もらうか。よしよし。善は、いそげだ、早速がいいぞ。先方は、いつでも、見合いをすると云うが、何日いつがいいかの」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は一向、そんな方はぞんざいだったが、この勝山さんもらおうとした時、親類が悪い風説うわさを聞いたとか言って、愚図々々ぐずぐず面倒だから、今の、山河内のを入れたんだが、身分が反対あちこちだとよかった。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「さうして君は妻君をもらうたか」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
(お千賀どのを、妻にもらう)と、かなり前披露ひろうしてしまったし、庄左衛門もつい当座の嘘に嘘がかさんで、退っぴきならない板挾みになってしまった。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
母様がもらうんじゃあるまい、君が女房にするんじゃないか。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おい武蔵たけぞうっ。いや武蔵どの。……頼むから、お通をもらってやってくれ。お通を救ってやるものはおぬししかないぞ。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妹君いもぎみの登子さまを、ぜひ高氏どのにもらってほしいと、守時様直々に、この憲房へ、折入ってのおはなしなので」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うすうすは、将頼兄から、聞いていました。そんな、お好きな方があるのに、いつおもらいになるおつもりかと、私たちこそ、待ち遠い思いをしていた程です」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「女房をもらったために土地をかえたというのも、おかしなはなしじゃねえか。俺にはに落ちかねるが」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嵯峨源氏さがげんじの、源護みなもとのまもるどのです。——兄上のお留守のうちでしたが、良兼叔父は、まえの妻を亡くされてから、その護どのの、御息女のひとりを、おもらいになりました。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あいつはもらったばかりの嫁を、もう後家にしおった。一躍、大名にでもなろうとしたものだろうが」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
早くもらえるなら、瑠璃子でも、六条の遊女でも、乃至ないしまた、どこかのどんな女でもいいと思った。
思わずめそやした。けれど賞めながらふと彼の思うらく。——この女房ばかりは、おれも少し目鑑めきき違いしたらしい。もらう前にていた以上どうしても人間が出来ている。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ということわざもある位なので、良縁としてもらわれたのに、彼女にはまだ世継よつぎの子がなかった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんじゃと、あの玄徳が、けんの妹をもらいにきたのですって。……まああつかましい」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いちかばちか、とにかく自分の希望を主張して、寧子の心の如何を問わず、もらいうけてしまおう——妻にしなければおかない——という彼らしい押しを試みてみたまでのことだった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武士には、一だくを重んじるという事がござりますぞ。事情を打明けて、この娘、頼むと仰せられたあの涙を、なぜ今お持ちなさらぬのか。よろしいおもらい申そうと、その時云った然諾ぜんだく
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、六波羅の評定衆に加えられ、その才はほどなく、鎌倉の執権代しっけんだい長崎高資ながさきたかすけの一族泰綱やすつなにみとめられた。そして泰綱のむすめを妻にもらった。まぎれもない彼は北条眷属けんぞくの一人であった。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分は大番にのぼり、高氏は鎌倉にとどまり、彼の消息も、噂だけには聞いているが、今では、赤橋殿の妹をもらって、北条一門の歴々に列している足利だ。以前の足利とんぼの一領主ではない。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、早くから艶色無双の評判がたかく、十六、前髪をるや剪らぬまに、薊州けいしゅう押司おうし、王にもらわれたが、つい二年ほどで先立たれ、やがて楊雄にしてからでも、まだ一年にもなっていなかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あんなのは、女房をもらってから、得て、タガのゆるむものだ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(近いうちに、浅野殿の寧子ねねを妻にもらう)
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうせ、今宵かぎり、この国の人とも山河とも訣別わかれてゆくおまえだから、知らないものならいうまいと思ったが、気づいたからはつぶさに話そう。あの灯はた、お那珂なかさんが、糸仲買の専右衛門に、嫁にもらわれてゆく仰山な明りだよ」
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、そのうちに、もらうよ」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『……どうだ。もらうか』