女連おんなれん)” の例文
御輿の近づいたことを、お仙がしらせに来た。女連おんなれんは門の外まで出た。そこから家々の屋根、町の中央を流れる木曾川が下瞰みおろされる。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
外が暗くなる時分に、白粉おしろいをこてこて塗って繰込んで来た若い女連おんなれんと無駄口をいたりして、お島は時の来るのを待っていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
実際磯吉は所謂いわゆる「解らん男」で、大庭の女連おんなれんは何となく薄気味うすきび悪く思っていた。だからお徳までが磯にははばかる風がある。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
と言うなりに、こめかみの処へ頭痛膏ずつうこうった顔をって、年増が真先まっさきに飛込むと、たちまち、崩れたように列が乱れて、ばらばらと女連おんなれんが茶店へ駆寄る。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
主人はまずこのくらいにして、次には茶の間で笑ってる女連おんなれんに取りかかるが、これは主人の冷淡を一歩むこうまたいで、滑稽こっけいの領分におどり込んで嬉しがっている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ほどなく軽業小屋から留守番に来た女連おんなれんといりかわりに、お角はお梅をつれてこの家を出て行きました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
酒をんで赤い顔した女連おんなれんが、兵隊に仮装して、長い剣をガチャガチャひきずりながら、宴会のところに、「万歳万歳」と云ってころげこんで来ると、長いひげしごいているえらい将校の人たちも
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
「すみませんが、六尺を一本ずつ切って戴きたいもんで。」安公は座敷にござを敷いて、仏に湯灌を使わそうとするとき、女連おんなれんの方へ声かけた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その辺の往来には朝通いらしい人達、労働者、牛乳のびんげた娘、野菜の買出しに出掛ける女連おんなれんなぞが岸本の眼についた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
折角せっかくたのしみにして、嬉しがって来た女連おんなれんに、気の毒らしくって、私が言訳いいわけらしくそう言いますと
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どうだい女連おんなれんはだいぶ疲れたろう。ここで御茶でも飲むかね」と宗近君が云う。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
芝居見物の晩から、お新もお牧に随いて山本さんの旅舎やどやの方へ一緒に成った。いよいよ女連おんなれん郷里くにへ向けてつという日には、山本さんは朝から静止じっとしていなかった。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
けれども、午飯ひるのおあつらえが持出されて、湯上りの二人と向合う、こちのあらいが氷に乗って、小蝦こえびと胡瓜が揉合もみあった処を見れば無事なものです。しかも女連おんなれんはビイルを飲む。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女連おんなれんが一度に笑い出すと、一はたちまち第三の問題に飛び移った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
隣の人に見られはせぬか、女連おんなれん最早もう帰りはせぬか、と周囲あたりを見廻したり、震えたりした。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
き進むエンジンの音に鳴留なきやんだけれども、真上に突出つきでた山のに、ふアッふアッと、山臥やまぶしがうつむけに息を吹掛ふきかけるようなふくろうの声を聞くと、女連おんなれんは真暗な奥在所へ入るのを可厭いやがった。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時々私は技手と一緒に、凍った往来に足を留めて、後部うしろの方に起る女連おんなれんの笑声を聞くこともあった。その高い楽しい笑声が、寒い冬の空気に響いた時は、一層雪国の祭の夜らしい思をさせた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そんな事をいったって、わかるような女連おんなれんではない。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すこし逆上のぼせる程の日光を浴びながら、店々の飾窓かざりまどなどの前を歩いて、尾張町おわりちょうまで行った。広い町の片側には、流行はやり衣裳いしょうを着けた女連おんなれん、若い夫婦、外国の婦人なぞが往ったり来たりしていた。
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)