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大王
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だいわう
まして、
大王の
膝がくれに、
婆は
遣手の
木乃伊の
如くひそんで、あまつさへ
脇立の
座の
正面に、
赫耀として
觀世晉立たせ
給ふ。
小兒衆も、
娘たちも、
心やすく
賽してよからう。
是非一読して
批評をしてくれと言つて百五六中
枚も有る
一冊の
草稿を
私に見せたのでありました、
其の小説はアルフレツド
大王の
事蹟を
仕組んだもので
文章は
馬琴を
学んで、実に
好く出来て
居て
途次、
彼の
世に
聞えた
鬼門關を
過ぎようとして、
不案内の
道に
踏迷つて、
漸と
辿着いたのが
此の
古廟で、べろんと
額の
禿げた
大王が、
正面に
口を
赫と
開けてござる、うら
枯れ
野に
唯一つ
「へい、
殿樣へ、
御免なせいまし。」と
尻からげの
緊つた
脚絆。もろに
揃へて
腰を
屈めて
揉手をしながら、ふと
見ると、
大王の
左右の
御傍立。
一つは
朽ちたか、
壞れたか、
大破の
古廟に
形も
留めず。