大山だいせん)” の例文
そして後醍醐には隠岐脱出いらい、いよいよ意気おさかんで、大山だいせんの祈祷の壇に、みずから護摩ごまいて七日の“金輪こんりんほう”を修せられ
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尊は門人達に、「熊山、吉野山、伯耆ほうき大山だいせんなどには仙境せんきょうがあって、吉野山の神仙と、熊山の神仙とは常に往来ゆききしている」
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「いや、わしかて解散賛成ですわ。わしはここまできたついでに、大山だいせんの麓にある従兄のところへ行ってみましょう」
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
侍従はともかくも難波津なにわずへ逃げ下ろうと言った。采女は伯耆ほうき大山だいせんの霊験者のもとへひとまず落ち着こうと言った。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
○「大山だいせんにや、雪が降つたかしらん、お宮の銀杏の葉がフラフラふる頃になあと大山にや雪がおりるけんなア」△
忘られぬお国言葉 (新字旧仮名) / 池田亀鑑(著)
街道を東に進んで右手に大山だいせんの美しい姿が見え出しますと、もう伯耆ほうきの国に入ります。県も鳥取とっとり県に移ります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ただ春霞のため伯耆ほうき大山だいせんが見えなかったのは残念でした。扇ノ山を下ってすぐ北の山へ登ります。
単独行 (新字新仮名) / 加藤文太郎(著)
山子は所謂山人の類にて、大山だいせんの如き深山に居捿し、熊笹を以て鳥の巣にも比すべき名ばかりの家を造り、戸籍もなく、就学せず、風の如く来りて風の如く去り、炭焼を
伯耆ほうき大山だいせんふもとの村里などでは、その日は正月下旬のある一日、または秋の収穫がすんでからのちに、一日のうちに木棉綿もめんわたから糸を引き、はたにこしらえて織りあげたものを
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
名高い伯耆はうき大山だいせんの姿も次第に車窓から望まれるやうになつた。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
昭和七年十月九日 松江を大山だいせんに向ふ。大山登山。
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
吾妻あづままき大山だいせん木曾きそ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
六波羅のもよう、赤松勢の進退、千早金剛の戦況、伯耆ほうき大山だいせん以後の後醍醐軍のうごきなどまで、ほぼ、把握していた高氏だった。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この山陽山陰の二道を合せて、昔から「中国」と呼びました。背をなす山脈には大山だいせんのような名峰もそびえます。山陽は宮島で山陰はあま橋立はしだてでその風光を誇ります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
伯耆ほうき大山だいせんの後には韓山からやまという離れ山があります。これも大山と背くらべをするために、わざわざからから渡って来た山だから、それで韓山というのだといい伝えております。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
何となれば、ここ伯耆ほうき大山だいせんと、隠岐の配所とでは、海を越えての暗黙なお語らいがくより交わされていたはずです。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伯耆ほうき西伯さいはく大山だいせん村大字鈑戸たたらど、鍛戸山
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「そこも大山だいせんのうちです。鳥ヶ峰、矢筈山、かぶと岳などにかこまれて、山上はひろく、長期の行宮あんぐうにも、敵のふせぎにも、万全と申せましょう」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くがには、鰐淵寺わにぶちでらをはじめ、日ノ御碕みさきの神職土屋一族、大社の国造孝時くにのみやつこたかときなどの宮方。——また、はるかにはかの伯耆ほうき大山だいせんが我をさしまねくかのごときすがただ。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ああ、大きい景だ。こんな大観は都では見られぬ。まぢかな南の山は、久米の皿山。遠い雲の帯の上なるは伯耆ほうき大山だいせんか。……これやうえにもお珍しかろ。輦輿れんよ
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……あの子はもうここにおりません。隠岐の先帝みかどが、山陰の大山だいせんに拠って、み旗の兵をお集めと聞くやいな、菊王をかたらって、一しょに大山へはしってしまいました」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
葛城かつらぎへわけ登り、諸国の大山だいせん経巡へめぐって、えん優婆塞うばそくが流れを汲み、孜々ししとして、修行に身をゆだねてきたが、それでもまだ聖護院の役座にさえ登れず、旅山伏の弁海が
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むしろ、かすみゆく出雲の岸や、大山だいせんの彼方を見て
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)