執念深しふねんぶか)” の例文
大膽な執念深しふねんぶかい、傲然がうぜんとした一個の紳士が、何だか、自分の雇人の中でも一番いやしいものに左右せられてゐるやうに思はれるのだ。
売薬ばいやくさきりたが立停たちどまつてしきり四辺あたりみまはして様子やうす執念深しふねんぶかなにたくんだか、とこゝろよからずつゞいたが、さてよくると仔細しさいがあるわい。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それで巨人きよじんせた西風にしかぜその爪先つまさきにそれを蹴飛けとばさうとしても、おそろしく執念深しふねんぶか枯葉かれはいてさうしてちからたもたうとする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
執念深しふねんぶかまつはる蛇からのがれて、大阪に待つてゐる叔母の前に坐りたいと思はれて來た。早く東京の家へのがれ込んで、蛇から受けた毒氣を洗ひ落したいとまで思はれて來た。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それからいくら追ひ払つても全く平然として厚顔に執念深しふねんぶかく灯のまはりを戯れまはる様子。
貴方あなたまだ、あのことつもいだつたの、貴方あなた隨分ずゐぶん執念深しふねんぶかいのね」と御米およねつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
勘次かんじはどれほど嚴重げんぢうにしてもおつぎがかはやかよ時間じかんをさへせまにはなかはなつことをこばむことは出來できなかつた。執念深しふねんぶかい一にん偶然ぐうぜんさういふ機會きくわい發見はつけんした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)