かか)” の例文
「親分、身柄調べたあひどうがしょう。あっしもそこを言ってやりやした。瘠せても枯れても他人ひとかかあへよくも——。」
日常身辺の事一として話の種ならざるはなし。然れども長屋のかか金棒かなぼう引くは聞くにへず識者が茶話さわにはおのづと聞いて身のいましめとなるもの多し。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
参詣人さんけいにんへも愛想よく門前の花屋が口悪るかかもとかくの蔭口かげぐちを言はぬを見れば、着ふるしの裕衣ゆかた総菜そうざいのお残りなどおのづからの御恩もかうむるなるべし
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「出て行くとも! かかアも氣違ひなら、おやぢも氣違ひぢや。そんな氣違ひぢぢイは御兔ぢや」と、立ちあがる。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
旅ほどかか可愛かわゆうておもしろい事はないぞ、いまだに其頃そのころを夢に見て後での話しに、この間もばばに真夜中ごろ入歯を飛出さして笑ったぞ、コレ珠運、オイ是はたり
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ばば、光あどうしたんだんべい、変だのう」此れは右の事があって十四五日してから万作がかかに話した言葉だ。何さま変だ。昔から妙なであったが、近来は殊に変だ。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「マアお上んなさい。こんな汚いところで、坐るところもありゃしません。それにかかはいませんし、ずっと、男世帯で、気味が悪いですけれど、マア奥へお通んなさい。」
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
かかあの奴も、頭が痛いなんぞといって、今朝から寝込んでしまいました」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「そうだ、あしたはまた、その御主人のお供で、朝から狩場めぐり、お帰りにはまた、庄内川で水馬や水泳のお稽古だろうて。——おかかおれも野駈のがけの支度だぞ。膝行袴たっつけひも草鞋わらじを見ておけよ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御者はかまちいこいて巻きたばこくゆらしつつ茶店のかかものがたりぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ジャック・スプラットとそのかかさ。
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
こちのおかかもどんとふや
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かかあの悋気りんき、いや、いっち怖いは成吉思汗ジンギスカン様の一睨み——おや! これでもお笑いにならない。
まあそこらの塵埃ごみのなさそうなところへ坐ってくれ、油虫がって行くから用心しな、野郎ばかりの家は不潔きたないのが粧飾みえだから仕方がない、おれおまえのような好いかかでも持ったら清潔きれいにしようよ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ガア/\わめかかアがくたばつて
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ばば、おかかも後押せ
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かかアとばばア。」
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)