哨兵しょうへい)” の例文
北満ほくまんの厳寒の野に立つ哨兵しょうへいと全く同じ服装をしてこまかい物理の実験をしようというのだからなかなか思うように仕事ははかどらない。
雪雑記 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
近くの小橋だの河原に具足をつけた明智方の哨兵しょうへいが立っていたが、それも本能寺にある信長の警備の兵と考えて不審に思う者もないらしい。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
星黒き夜、壁上へきじょうを歩む哨兵しょうへいすきを見て、のがれ出ずる囚人の、さかしまに落す松明たいまつの影より闇に消ゆるときも塔上の鐘を鳴らす。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ベンチの上にただ一人の散歩者が、新聞を広げたまま居眠っていた。官邸の鉄門のところには、無駄むだ哨兵しょうへいらが眠っていた。
ふたりの哨兵しょうへいも退いて、ほとんどガヴローシュと同時に戻ってきた。それは街路の先端の哨兵とプティート・トリュアンドリーの見張り兵とであった。
ボルシェヴィキに反対する白系露人が工部局のロシア義勇兵に続々加盟して、ガーデン・ブリッジ、四川路しせんろ橋、蘇州橋等の橋上に哨兵しょうへい小屋を急造して警戒を始めた。
地図に出てくる男女 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
哨兵しょうへいがよく見ると、それは向田大尉殿でありました。哨兵はむろん大尉殿の顔を識っています。
火薬庫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
たとえて言わば奥州街道おうしゅうかいどうから来るか東海道から来るか信越線から来るかもしれない敵の襲来に備えるために、ただ中央線の沿線だけに哨兵しょうへいを置いてあるようなものである。
天災と国防 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
哨兵しょうへいつきの釣とは、一生に再び見ること能はざるべし。
東京市騒擾中の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
すでに、蔵番くらばん哨兵しょうへい一隊は、そこらじゅうに叩きつけられてしまい、三番ぐらの鉄の扉は、滅茶苦茶に破壊されてしまっている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
反徒の方がモンデトゥール街に出しておいた哨兵しょうへいは、ひとりの国民兵のために警報を発することをしなかった。
丁度北満の厳寒の野に立つ哨兵しょうへいとまったく同じような服装をして、こまかい物理の実験をしようというのであるから、仕事はなかなか思うようにははかどらない。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「狐が向田大尉どのに化けたのを、哨兵しょうへいに殺されたのさ。」
火薬庫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
峡谷きょうこくで、蜀の哨兵しょうへいに出会った。その逃げるを追って、なお進むと、やや有力な蜀勢が寄せ返してきた。一進一退。数日は小競こぜり合いに過ぎた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
襟飾えりかざりをつけていない金髪の青年が、各防寨の間を駆け回って命令を伝えていた。剣を抜き青い警官帽をかぶったもひとりの男は、方々に哨兵しょうへいを出していた。
遠く哨兵しょうへいを立たせておけば、まず敵の急襲にあわてるおそれはない。真夏なので、夜の具、食糧なども、何とか間に合う。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
アンジョーラは防寨ぼうさいの外に三人の哨兵しょうへいを出し、ひとりをシャンヴルリー街に、ひとりをプレーシュール街に、ひとりをプティート・トリュアンドリー街の角に置いた。
「敵ではありません。草野ノ庄を守っている哨兵しょうへいです。大吉寺から出ている見張りの衆ですから撃ってはいけません」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前夜のように哨兵しょうへいらが退いてきた、しかし今度は哨兵の全部だった。
青鷺あおさぎの三蔵は、ようやくここで人数に追いついた。背後の目として見張っていた哨兵しょうへいは、三蔵を槍囲みにしたまま、池田勝入の床几しょうぎの前へつれて来た。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
がさっと、何か暗闇のなかで、いたちの駈けるような物音がしても、哨兵しょうへいはすぐ、眼をひからせた。本能的に胃が胃液を滲出しんしゅつするため、その後では、きっと
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城外の哨兵しょうへいは、頻りと敵軍の近づくのを告げている。この城もまた秀吉の破竹な軍勢を防ぐに足る堅塁けんるいではない。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
哨兵しょうへいたちが雑談していた。雲もない一碧いっぺきの空に、かさなり合っている山々の秋色しゅうしょく、その裾に見える湖の明るさ、ふとすると、とりに、欠伸あくびを誘われそうだった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
賊の哨兵しょうへいは、見つけるとたちまち、大勢して彼を包囲し、奥にいる馬元義と李朱氾へすぐ知らせた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに応じて、ガサゴソと灌木を踏む音をさせ、哨兵しょうへいたちは山鼻に影をかさねていた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三等出仕の烏丸からすまる一郎とふたりで、昨日から敵のなかへ深く這入って行ったが、烏丸が薩軍の哨兵しょうへいに発見されて追われたため、彼はひとりとなってからくも復命に帰って来たのであった。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ兵火の余燼よじんが立ち昇っている淀堤よどづつみの上へその影をあらわすと、当然、官軍の哨兵しょうへいが彼の前に立ったが、そのたびに、槍の血を新しくしては不死身ふじみのように駈けつづけているのである。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その八千の兵を、三木城の四方に配して、各所に大隊司令部を置き、半恒久的はんこうきゅうてきな支営をもうけて、支営と支営とのあいだには、さくい、哨兵しょうへいたむろさせ、城中と外部との通路を遮断した。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柵へ近づくや、立ちどころに哨兵しょうへいを斬り捨て、わっと一斉に、陣中へ入った。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一封を彼にさずけ、きびすをめぐらして来るところへ、柵の哨兵しょうへいがつたえて来た。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
果たして耳ざとい哨兵しょうへいの一群が、突如、木蔭を排して踊り出で
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と敵の哨兵しょうへいであろう、疎林の端まで来ると
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
哨兵しょうへいまで眠りこけています」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国境で哨兵しょうへい狼火のろしをあげた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)