わめ)” の例文
これを指しては、背低せびくの大隊長殿が占領々々とわめいた通り、此処を占領したのであってみれば、これは敗北したのではない。
ゾオラが偶々たま/\醜悪しうあくのまゝをうつせば青筋あをすじ出して不道徳ふだうとく文書ぶんしよなりとのゝしわめく事さりとは野暮やぼあまりに業々げふ/\しき振舞ふるまひなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
「カフエエへ」と云ふ塾監の声を聞いて今迄絵を稽古して居た五十余人の同学生が「オオ、ラ、ラ」と一斉にわめき立ち
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
カピ妻 往來わうらい人々ひと/″\は、あるひはロミオとび、あるひはヂュリエット、あるひはパリスとびかはして、聲々こゑ/″\わめて、吾屋わがや廟屋たまやへといそぎまする。
今日はいち立つ日とて、はかりを腰に算盤そろばんを懐にしたる人々のそこここに行きかい、糸繭の売買うりかいに声かしましくののしわめく。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この時下の方でしきりとわめく声が耳に入る——何しろ沖から吹く風の強いのと、石油の臭いが烈しいので気が気でなく、目が昏んで空耳のようにも思われた。
暗い空 (新字新仮名) / 小川未明(著)
突きコリヤ歩かれぬとわめくを車夫二人手を取り跡押あとおしせし車夫の女房ふたつ提灯てうちんを左右の手に持ち瀧のほとりに指上げたり瀧は高きにあらねど昨日きのふ今日けふの雨に水勢を増しさながら大河を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
「お母さん!」と、思い存分にわめきますと、その声は木精こだまにひびいて確かに母さんの耳にも聞えたのです。
迷い路 (新字新仮名) / 小川未明(著)
カピ長 なんとしたことぢゃ、街上そとにて人々ひと/\わめつるは?
「オイ、英語を知っているか、おれが教えてやる。」とわめきながら、とぼとぼと来かかったものがあった。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
怪物がわめいて、静かな、広い野を地響をうって来た時、眠っている草、木、家は眼醒めた。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
もう、今頃は、誰かが見付かった時分であろうと思ったが、皆んなのわめく声も聞えなかった。彼は、お声をひそめて、黙って、若しや鬼がこの上の辺りを通っているのではないかと思っていた。
過ぎた春の記憶 (新字新仮名) / 小川未明(著)