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古廟
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こべう
途次、
彼の
世に
聞えた
鬼門關を
過ぎようとして、
不案内の
道に
踏迷つて、
漸と
辿着いたのが
此の
古廟で、べろんと
額の
禿げた
大王が、
正面に
口を
赫と
開けてござる、うら
枯れ
野に
唯一つ
と
野中の
古廟に
入つて、
一休みしながら、
苦笑をして、
寂しさうに
獨言を
云つたのは、
昔、
四川酆都縣の
御城代家老の
手紙を
持つて、
遙々燕州の
殿樣へ
使をする、
一刀さした
威勢の
可いお
飛脚で。
「へい、
殿樣へ、
御免なせいまし。」と
尻からげの
緊つた
脚絆。もろに
揃へて
腰を
屈めて
揉手をしながら、ふと
見ると、
大王の
左右の
御傍立。
一つは
朽ちたか、
壞れたか、
大破の
古廟に
形も
留めず。