口癖くちくせ)” の例文
病人は平生へいぜいから自分の持っている両蓋の銀側時計を弟の健三に見せて、「これを今に御前に遣ろう」とほとんど口癖くちくせのようにいっていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かれは平生からひとのよく口癖くちくせにする、人間は容易なことで餓死するものぢやない、うにかなつて行くものだと云ふ半諺はんことわざの真理を、経験しない前からしんした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私はそれが年長者に対する私の口癖くちくせだといって弁解した。私はこの間の西洋人の事を聞いてみた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
姉の眼にはいつか涙がたまっていた。姉は健三の子供の時分、「今に姉さんに御金が出来たら、健ちゃんに何でも好なものを買って上げるよ」と口癖くちくせのようにいっていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
寺尾は逢ふたんびに、もつと書け書けと勧める。さうして、おれを見ろと云ふのが口癖くちくせであつた。けれどもほかひとくと、寺尾ももう陥落かんらくするだらうと云ふ評判であつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
このおとうと卒業後そつげふご主人しゆじん紹介せうかいで、ある銀行ぎんかう這入はいつたが、なんでもかねまうけなくつちや不可いけないと口癖くちくせやうつてゐたさうで、日露戰爭後にちろせんさうごもなく、主人しゆじんめるのもかずに
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其晩そのばんかれ宗助そうすけと一時間じかんあまりも雜談ざつだんふけつた。かれ重々おも/\しいくちかた自分じぶんはゞかつて、おもれないやうはなし調子てうし、「しかるに」と口癖くちくせすべ平生へいぜいかれことなるてんはなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
二日うちへ帰ると三日はの方で暮らすといったふうに、両方の間を往来ゆききして、その日その日を落ち付きのない顔で過ごしていました。そうして忙しいという言葉を口癖くちくせのように使いました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)