)” の例文
ましてや乙女、おゆうが、秀吉の眼にとまって、秀吉的な情炎の誘惑に、ついにてないでその側室そくしつとなったのもぜひがない。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にも関らず、毎日、平然と奉行所に出仕して、あらゆる四囲の逆境と、おのれに打ちとうとしている姿は、何とも雄々おおしいものでおざる。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれが抜け駈けの功をちそこねた羽黒村はぐろむらの不覚な一戦は、そのとき五体にうけた手傷以上に、かれの心を、さいなんでいる。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このさきの高氏は、よくその大望への万難にてるか、または、半途で、あえない敗者となって野たれ死にするか、神以外には分らない身だ。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人間、日頃はいつでもと死を覚悟しているつもりでも、さてその場にのぞんでは、この生理的な恐怖の襲いには、どうにもてないものであると。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
畢竟ひっきょうするに、人生とは、苦難苦闘の連続であり、人生の快味といえば、ただその一波一波にったわずかな間の休息のみにあるといってよい。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼を迎えた留守居衆から端々はしばしの召使までが、その夜、身を粉にしても、主人のたその尊い「生」をなぐさめようと争い努めたのはむりもない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
、下の弟五人も抱えて、世にってゆくには、叔父共の上を超えた肚ぐろさも、持たねばだめだ。よし、おれだけは
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われわれ武門のはしくれだった者さえ、弱肉強食のちまたにはてず、落魄らくはく愍然びんぜんたる境界に追いやられ、いまは争闘の世に、まったく思いっているのに。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義経は、どう意気地なしに書かれても、地下では、ある一時代の平和をちえた誇りだけで、莞爾かんじと、どこかで霊の満足をえていることであろうと思う。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして伊勢や伊賀の山中でも、行く先々では、足利方のさまたげに出会ったが、行くところ、それにった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこの造立ぞうりゅうや改築を心がけたりなど——すべては彼が五十歳前後にちえた時運と権力と健康をそそいで、短い一生のまに、その成果をみようとしたものです。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この一城をだに攻めおとせないようなことでは、祁山へ出た所で、魏の大軍にはてまい。陳倉道の北は街亭にあたる。この城を落して、味方の足だまりとなせ」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、ここまでちとってきたご理想の具現をふかく憂えるからだ。もう次の高時が洛中におごっておる。
かれは、にんを守って人とり、にんして、強国の間に生き、忍にって今日の位置を築いた。消極的な忍ではなく、積極的な大希望を遠くに期している忍であった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不撓不屈ふとうふくつ、主家再興のために、大国毛利を敵として、数十年間、ここまで百難にち百難に屈せずに来た彼が、一転、余りにもみじめなそしてあわれむべき物腰であった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
った。やっと、わしは、わしの愚に、いま剋った。——平太よ、かんべんせい。彼女あれを、そちになぐらしたほど、わしは意気地のない親だった。おろかな男親ではあった。
当の公綱の思わくにすれば、遠い蝦夷地えぞちノ乱などで、連年いくら功をあげても、中央では知る者もないが、ここで楠木討伐にてば、一躍、わが武名は全国に鳴りひびく。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵ともよく闘ったが、利家は、肉体の意慾にも、よくって来たと、われながら思うのだった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうした心中の賊につには、あの闇々冷々あんあんれいれいたる獄中はまことに天与の道場であった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『それだから、おまえをやるのだ。つらい恥にって来い。あたいによらず、早いがいいぞ』
ためされてはち、っては試されつつある成長の期間に、遂には、与えられる艱難を征服するだけに止まらず、求めて艱難へ突入し、艱難をうしろに振り向くときの愉快な人生を
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかに後醍醐のご気性であろうにせよ、肉体のご困憊こんぱいにはちえない。十善の天子とお生れあっていらい、初めて“非情な世の粗土あらつち”というものに、そのお跣足はだしを噛まれたのである。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文字の表には、いわれてないことも、歴々と、彼の血みどろな解脱のすがたが——己れにって来た足蹟そくせきが、読みとられる。要するに、五輪書も、かれの人生体験の外のものではない。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし後日、正成が寸功をち得たなら、この者たちを第一の功労としよう。あとの味方などは、寄るも寄らぬも、正成の旗色次第。まずは関東を相手に、一戦の上ならでは、寄りつくまい
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、自らその幸福を、ちとるほどな覚悟をもってかからねば、むずかしいぞ
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「きょうの勝ちいくさは、おまえたちが、身を片輪にまでしてちとってくれたものだ。うれし泣きなら聞えるが、愚痴はないはず。たれにも増してよろこぶがいい。おまえたちは勝ったのだ」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして年もご自分とあまりちがわぬようなと眺めながら、こんな弱小な身で、どうしてしばしば足利勢のきもを寒からしめるような戦功をちとるのであろうかと不審のようなお顔であった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「出家する者の第一の苦しみは、愛する者の涙に打ちつことだった」
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生れつき余り丈夫でもない肉体なのに、この矮短わいたんな一小躯しょうくをもっても、それにって来られただけの意志を作っておいてくれた幼少時の貧苦と、世路の逆境にも、沁々しみじみありがたさを思う日もあった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、おめえには、御苦労だったが、おれが達者で出かければ、千両箱はこの二つは欠かすこッちゃあねえ。……江戸の御金蔵からさえ、千両箱の四つも担ぎ出した刑部だが、ああ、病気にゃてねえ」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
斬り死にしての戦死よりも多くの苦闘にって死んだ。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
死中に入っておたがいえあるせいちとろうぞ
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と立て、御自身は、待望の権力をちとった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「病にはてん。いかな義貞たりとも」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)