凱旋門がいせんもん)” の例文
幾頭の獅子ししける車の上に、いきおいよく突立ちたる、女神にょしんバワリアの像は、先王ルウドヰヒ第一世がこの凱旋門がいせんもんゑさせしなりといふ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そのとき天の方では、日の沈む側に雲がむらがっていた。その一つは凱旋門がいせんもんに似ていて、次のはライオンに、三番目のははさみに似ている。
冬日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
パリの凱旋門がいせんもんだの、ロンドンの議事堂だの、たくさん持っている。あの写真で日本を律するんだからたまらない。きたないわけさ。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうしたら、ワイキキ・ビイチに行く途中、凱旋門がいせんもんのところで、あなたと内田さん達の一行に、ぱったり逢いました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
る養殖家の話では巴里で一年に食べられる蝸牛の数は約七千万匹で、それを積み重ねると巴里の凱旋門がいせんもんよりも高くなるというから大したものである。
異国食餌抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
カルーゼルの凱旋門がいせんもんは、卑劣に得られた戦勝の名前におおわれ、それらの新流行に困らされ、おそらくマレンゴーやアルコラの戦勝の名前に多少恥じてか
そして凱旋門がいせんもんは、勇敢なる進軍のように、帝国軍団の超人間的な大跨おおまたを、丘の上に踏み開いていた。
シャンゼリゼの大通りを真っすぐに、パリの、あの有名な凱旋門がいせんもんの広場は、八方に放射線の街路があるそうだが、モルガンの住宅は、アベニウホッシュのほとりだという。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
されば月毎に彼が富山のかどを入るは、まさに人の母たる成功の凱旋門がいせんもんすぐる心地もすなるべし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
凱旋門がいせんもんをばあれほど高く、あれほど大きく、打仰うちあおごうとするには、ぜひともその下で、乱入した独逸ドイツ人が、シュッベルトの進行曲を奏したという、屈辱くつじょくの歴史を思返す必要がある。
曇天 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
大通りには、花で飾った凱旋門がいせんもんが出来ている。どの町に行って見ても大勢の人が、落ち着かないような様子をして歩いている。その上ににおいのある夏の夕の空気が、心地く柔かに漂っている。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
もよおしのかかることは、ただ九牛きゅうぎゅう一毛いちもうに過ぎず候。凱旋門がいせんもんは申すまでもなく、一廓いっかく数百金を以て建られ候。あたかも記念碑の正面にむかひあひたるが見え候。またそのかたわらに、これこそ見物みものに候へ。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
万世まんせい橋のところに立つ凱旋門がいせんもんは光って見えたかと思うと復た闇に隠れた。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
南から還った三軍は、寒風もなつかしく、凱旋門がいせんもんに入った。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし彼女の凱旋門がいせんもん、恐るべきことがある。
恋の一杯売 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
大きな凱旋門がいせんもんがまんなかに立つてゐる。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
巨勢はわたの如き少女が肩に、我かしらを持たせ、ただ夢のここちしてその姿を見たりしが、かの凱旋門がいせんもん上の女神バワリアまた胸に浮びぬ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
サン・マルタン凱旋門がいせんもんの前では、カラビン銃を持ったひとりの青年が、単独で一個中隊の騎兵を攻撃した。
ほろを開いたランドウが横向に凱旋門がいせんもんを通り抜けようとする中に——いた——いた。例の黒い顔がき返る声に囲まれて過去の紀念のごとくはなやかなる群衆の中に点じ出されていた。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私はかくの如き日本建築の遠景についてこれをば西洋で見た巴里パリー凱旋門がいせんもんそのの眺望に比較すると、気候と光線の関係故か、ただ何とはなしに日本の遠景は平たく見えるような心持がする。
別に凱旋門がいせんもんと、生首提灯なまくびじょうちんと小生は申し候。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
凱旋門がいせんもんもやはらかに
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
プラウツスの書いた鞦韆ぶらんこはエトアール凱旋門がいせんもんの気球の下に現われている。アプレイウスが出会ったペシルの剣食い芸人はポン・ヌーフ橋の上の刃み芸人である。
こわい事だと例の通り空想にふけりながらいつしか新橋へ来た。見ると停車場前の広場はいっぱいの人で凱旋門がいせんもんを通して二間ばかりの路を開いたまま、左右には割り込む事も出来ないほど行列している。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
黄金こがねにて築く DÉCADANCEデカダンス凱旋門がいせんもん
凱旋門がいせんもんを中心に
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)