円滑えんかつ)” の例文
旧字:圓滑
円滑えんかつ円滑と云うが、円滑の意味も何もわかりはせんよ。迷亭が金魚麩ならあれはわらくくった蒟蒻こんにゃくだね。ただわるくなめらかでぶるぶるふるえているばかりだ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼等は言う、今日の生活は余りにも殺風景なものであり、これを美化して円滑えんかつならしむるものは芸術であると。然り芸術は彼等にとっては一種の享楽にすぎない。
童話に対する所見 (新字新仮名) / 小川未明(著)
水車すいしゃの運動はことなき平生へいぜいには、きわめて円滑えんかつにゆくけれど、なにかすこしでも回転かいてんにふれるものがあると、いささかの故障こしょう全部ぜんぶの働きをやぶるのである。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
その踊り子は首を左にかたむけているうちに、急に驚いたように首を右にかたむけ直すのだった。首を、その逆に右から左へ傾け直す行動モーションは自然に円滑えんかつに行われるのだった。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
同じ軒下のきしたに住んでいる祖父母と叔父夫婦との仲がとかく円滑えんかつを欠き、——仕切戸しきりどの堅くとざされたのもそのためらしかった——この親子の二家族も別々になっていた。
けれど、いくらかんたんにされても、なれなれしくあつかわれても、ひとりでに使者のからだはかたくなってヤアにたいして、オウというような円滑えんかつなへんじはできないで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私のごちゃごちゃの忿懣ふんまんが、たちまち手近のポチに結びついて、こいつあるがために、このように諸事円滑えんかつにすすまないのだ、と何もかも悪いことは皆、ポチのせいみたいに考えられ
加之それに、承われば此頃では諸事しょじ円滑えんかつに運んで居るとやら、愚痴ぐちは最早言いますまい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
宗匠そうしょうずその場を円滑えんかつに、お豊を安心させるようにと話をまとめかけた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
維新前後の吾身わがみ挙動きょどうは一時の権道けんどうなり、りに和議わぎを講じて円滑えんかつに事をまとめたるは、ただその時の兵禍へいかを恐れて人民を塗炭とたんに救わんがめのみなれども、本来立国りっこくの要は瘠我慢やせがまんの一義に
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
時勢じせいしからしむるところとは申しながら、そもそも勝氏が一身を以て東西の間に奔走ほんそう周旋しゅうせんし、内外の困難こんなんあた円滑えんかつに事をまとめたるがためにして、その苦心くしん尋常じんじょうならざると、その功徳こうとくだいなるとは
人間的には、両方とも、好きでも嫌いでもない程度につきあっているし、藩務も円滑えんかつに行っているが、九郎兵衛の眼から見ると、どこやら内蔵助はまだ乳くさい気がしてならない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)