其側そのそば)” の例文
洋館へ行って見ると、少将の書斎の中に(後に見取図を掲げる)弘一君が血に染って倒れ、其側そのそばに甲田君が青い顔をして立っていた。
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
時々ふと気が変って、此様こんな女に関係しては結果が面白くあるまいと危ぶむ。其側そのそばから直ぐ又今夜こそは是が非でもという気になる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
院長ゐんちやう其側そのそばこしけて、かしられて、じつとして心細こゝろぼそいやうな、かなしいやうな樣子やうすかほあかくしてゐる。ハヾトフはかたちゞめて冷笑れいせうし、ニキタと見合みあふ。ニキタもおなじくかたちゞめる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
男も其側そのそばへ腰をかけた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ちッぽけなむくむくしたのが重なり合って、首をもちゃげて、ミイミイと乳房を探している所へ、親犬が余処よそから帰って来て、其側そのそばへドサリと横になり、片端かたはしから抱え込んでベロベロなめると
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
其側そのそば小使こづかひや、看護婦かんごふくつ煉瓦れんぐわゆか音高おとたか踏鳴ふみならして往來わうらいし、病院服びやうゐんふくてゐるせた患者等くわんじやらとほつたり、死人しにんかつす、不潔物ふけつぶつれたうつはをもつてとほる。子供こどもさけぶ、通風とほりかぜはする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
が、寺は其反対に荒れ果てて、門は左程さほどでもなかったが、突当りの本堂も、其側そのそば庫裏くりも、多年の風雨ふううさらされて、処々壁が落ち、下地したじの骨があらわれ、屋根には名も知れぬ草が生えて、ひどさびれていた。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)